【5月18日 東方新報】空前のペットブームが続く中国で、次々と新しいペットビジネスが誕生している。

 中国でゴールデンウイーク(労働節連休)初日となった4月29日、南部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)柳州市(Liuzhou)から「愛犬と行くバスツアー」の一行が出発した。飼い主とワンちゃんたちは同自治区内の南寧市(Nanning)の大竜湖(Dalong Lake)や広東省(Guangdong)の海陵島などの観光地を巡った。トラブルを起こさないよう犬の首はリードをしっかりつけて、トイレは飼い主が処理した。

 4頭の愛犬を連れた女性は「この子たちは私の家族。数千元(数万円)の費用がかかりましたが、一緒に旅行ができることはそれ以上の価値があります」と笑顔を浮かべる。

 ツアーを企画した楊耀華(Yang Yaohua)さんは「2006年にペット好きの仲間と小旅行を企画し、次第に旅行グループに発展しました」と説明。公共交通機関や観光地、ホテルなどは「ペットお断り」が多いため、楊さんが交渉・調整を続け、観光ルートを切り開いている。「ペットツアーの需要は高まる一方です」と楊さんは話す。

 内陸の四川省(Sichuan)の会社は「ペットと行く空の旅」を企画。チャーター便で成都市(Chengdu)から「中国のハワイ」といわれる海南島への旅を実施している。北京市や上海市の大都市でもペットツアーは増えている。

 中国では長年、「ペットはぜいたく」という考えが強く、さらに1990年代前半までは狂犬病対策で多くの都市で犬を飼うことは禁じられていた。今世紀に入って経済成長が続き、2010年ごろからペットを飼う家庭が急増。2020年には都市部で飼われている犬、猫は1億匹を超えた。

 消費力旺盛な1990年代後半生まれのZ世代の飼い主が多く、ペットのことを「毛孩子(毛むくじゃらの子ども)」と呼んで人間の家族同然にみなし、自らを「鏟(金へんに産のつくり)尿官(Channiaoguan)」と呼ぶ。直訳すると「おしっこ始末係」。ペットが「ご主人様」で自分たちは「忠実なしもべ」という意味だ。

 こうした流れを受けてペット向けに特化した製品を作る企業が増え、自動給餌器・給水器や冷暖房完備型猫ハウス、全自動スマートトイレなどが次々と登場。ペット保険やペット向け葬儀・墓地などのサービスも増えている。

 4月に行われた上海モーターショーでは、「ペット向け仕様SUV」も登場。ペットがゆったりと過ごせるセーフティーバスケットやペットから出る体毛の吸引器、さらにペット用エアバッグを設置している。

 2021年の中国統計年鑑によると、中国では1人暮らしをしている人が1億2500万人を超える。「自分の暮らしを楽しみたい」と晩婚化や非婚化が進んだ影響で、子どもを持とうとしない夫婦も増えている。そうした人びとの「家族」としてペットは増え続けている。

 大手コンサルタント会社の艾瑞諮詢(iResearch)によると、中国のペット市場は2022年に4936億元(約9兆6898億円)に達し、2025年に8114億元(約15兆9284億円)に上ると予想されている。(c)東方新報/AFPBB News