【5月11日 AFP】ロゼリン・アセナさん(43)は、弟がケニアの新興宗教「グッドニュース・インターナショナル教会(Good News International Church)」に入信し酒を断ったとき、弟をアルコール中毒から救ってくれた教団の指導者に感謝の念を抱いた。

 だが、20年後、弟が殺人容疑で逮捕され、教団の指導者ポール・マケンジー・ヌセンゲ(Paul Mackenzie Nthenge)被告の下で、自分の妻と下はまだ1歳だった5人の子どもを含む多数の信者を飢えさせるための見張りをしていたと非難されることになるとは想像もしていなかった。

 ロゼリンさんは、テレビで手錠を掛けられた弟を見た時は「ショックで、恐ろしかった」と憔悴(しょうすい)した声でAFPに話した。

 インド洋に面した東部マリンディ(Malindi)近くのシャカホラ(Shakahola)の森で先月、集団墓地が発見された。マケンジー被告が、「イエス・キリスト(Jesus Christ)に会える」として信者を餓死させたとみられている。5月9日までに133人の遺体が見つかった。

 警察によると、ロゼリンさんの弟ケビン・スディ・アセナ(Kevin Sudi Asena)被告(41)は、カルトの信者が断食を続け、森の中の施設から生きて逃げることがないよう監視していた「用心棒団」に所属する16人の1人だった。「用心棒団」は武装しており、栄養状態は良好だったという。

 100人余りの検視から、犠牲者の大半が餓死したことが分かっている。だが、子どもを含む一部は首を絞められたり、殴られたり、窒息したりしたことが死因だった。

■「前からおかしかった」

 ロゼリンさん家族が教団の何かがおかしいと最初に感じたのは、マケンジー被告が聖書は教育を認めていないと主張し、信者に子どもを学校に行かせないよう要求し始めた時だった。

 教団はこのほか、電子マネーの使用や医療機関の受診、ワクチン接種、女性のかつらの着用などにも反対していた。

 西部ビヒガ(Vihiga)県に暮らす家族は、ケビン被告に脱会するよう必死に説得したが、拒否された。

 マケンジー被告が2019年に教会を閉鎖し、信者たちにビヒガから700キロ離れた静かな町シャカホラに移住するよう求めると、ケビン被告は即座に同意した。

 ロゼリンさんは「朝起きたと思ったら、この土地も家もいらない、自分はイエス(キリスト)の元に行くと言い出した」と当時を振り返った。「出て行ったときから、もうおかしかった」

 ケビン被告は今年2月、母親に電話を掛けてきた。「神に会う」ため、キリストが十字架に架けられたとされる中東エルサレム(Jerusalem)郊外ゴルゴタ(Golgotha)に向かう途中だと話した。

 その2か月後、警察はシャカホラの森で集団墓地を発見した。