【5月21日 AFP】ブラジル出身の人工知能(AI)研究の第一人者ベン・ゲーツェル(Ben Goertzel)氏(56)はこのほど、AFPのインタビューに応じ、AIは数年後、人の仕事の80%を担うかもしれないが、それはいいことだとの見解を示した。

 数学者で認知科学者でもあり、ロボットクリエーターとしても知られるゲーツェル氏は現在、人の認知能力を持つAI「汎用(はんよう)人工知能(AGI)」を開発する研究グループ「シンギュラリティネット(SingularityNET)」の最高経営責任者(CEO)を務めている。

 ゲーツェル氏は今月、ブラジル・リオデジャネイロで開催された世界最大級のテクノロジーカンファレンス「ウェブサミット(Web Summit)2023」に合わせ、AFPのインタビューに答えた。

■AIは人の知能に追いつくか

Q:人の認知能力を持つAIの開発はどこまで進んでいるのか?

A:機械が人と同じくらいの知能を持ち、未知のことにも即座に対応できるようになるには、学習やプログラミングを超える大きな飛躍が必要だ。私たちはまだ、そこまでは到達していない。だが、数十年後ではなく数年後には可能だと信じるだけの根拠はある。

■AIのリスク

Q:「チャットGPT(ChatGPT)」などのAIをめぐる議論やリスクについてどう思うか? 開発を半年間中断すべきだという声もあるが。

A:危険な超人的AIだと危険視して開発を中断すべきではない。超人AIのようなものはAIシステムとしては非常に興味深いが、人間のような汎用知能にはなり得ない。科学に必要とされる複雑な多段推論はできないからだ。学習したデータの範囲外の、奇抜な新しいものを発明することはできない。

 誤った情報を広めることもあるので、開発を中断すべきだという意見もある。これはおかしな議論だ。それならなぜインターネットを禁止しないのだろうか。インターネットはまさにそうで、いつでもすぐに大量の情報を入手できるが、でたらめや偽情報も拡散している。

 社会は自由であるべきだ。インターネットが禁止されるべきではないのと同じく、(チャットGPTも)禁止されるべきではない。