【5月5日 AFP】米ニューヨークの地下鉄の車内で1日、ホームレス男性が乗客に首を押さえ付けられ死亡した。事件をめぐり検察は4日、当時撮影された動画を公開した。

 この事件はニューヨークの二つの切実な問題、多数のホームレスが精神疾患を抱えていることと、地下鉄の治安が悪化していることを浮き彫りした。それと同時に、被害者が黒人で、加害者が白人と思われることから人種的な側面も加わり、批判が巻き起こっている。

 亡くなったのは、地下鉄車内で米歌手マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)さんの物まねをしていたことで知られていたホームレスのジョーダン・ニーリー(Jordan Neely)さん(30)。

 警察は1日午後2時30分ごろ、マンハッタン(Manhattan)の地下鉄駅ブロードウェー・ラファイエット(Broadway-Lafayette Street)に駆け付けたと発表している。二ーリーさんはすでに意識がなく、搬送先の病院で死亡が確認された。

 検視官はAFPに対し、ニーリーさんは頸部(けいぶ)圧迫により殺害されたと説明した。

 公開された動画には、24歳の米海兵隊員とされる男が、車内に倒れたニーリーさんの首の辺りを押さえている様子が映っている。

 動画を撮影したフリージャーナリストのフアン・アルベルト・バスケス(Juan Alberto Vazquez)氏はAFPに、ニーリーさんが「食べ物も飲み物もない」と大声を上げたところ、男がニーリーさんを押さえつけたと語った。

 警察は男を事情聴取しているほか、検察は起訴について検討している。

 米ホームレス支援団体「ホームレス連合(Coalition for the Homeless)」のデイブ・ギッフェン(Dave Giffen)氏は事件について、ニューヨーク市当局が「家がなく、精神的に不調な人々の生活について非情なほど無関心」な証拠だと述べた。

 また民主党左派のアレクサンドリア・オカシオコルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)下院議員はツイッター(Twitter)に、ニーリーさんは「殺された」と投稿した。

 4日夜にはブルックリン(Brooklyn)で男の逮捕を求める抗議デモが計画された。

 ニューヨーク市議会のエイドリアン・アダムズ(Adrienne Adams)議長は声明で「この殺人事件に対する司法制度の初期対応は憂慮すべきであり、黒人を含む有色人種が今も直面している二重基準を世界に示している」と批判した。(c)AFP