【5月1日 東方新報】日本各地の観光地に中国人旅行客が戻りつつある。肌感覚ではコロナ前の最盛期の2~3割まで回復した。昨年12月に中国の厳格なコロナ対策が緩和されてから初の5月の大型連休。日本だけでなく東南アジアなどの周辺国は中国からのインバウンド回復に期待している。

 中国では5月1~3日のメーデー(労働節)休暇にその前の土日を入れて5連休。5月4日と5日に有給休暇を2日間取って9連休にする人も多い。北京市の公共交通機関に勤務する黄(Huang)さん(32)は外資系企業に勤める妻と6泊7日のタイ旅行を予約した。バンコクとプーケットを回る計画だ。

「長い旅行ではないので、ビザや検疫手続きが簡単なタイを選びました。欧米や日本も検討しましたが、ホテル代が高くて後回しにしました」と黄さん。ウクライナ情勢で航空燃料が高騰しているほか、運行便数もコロナ前の水準まで回復していない。人気路線はエコノミークラスの価格が定価まで上昇しているという。

 中国メディアによると、中国航空各社の海外便はコロナ前の2019年に比べて、今年1月に10%まで、2月は15%、3月は21%と徐々に回復している。航空便の便数の回復状況もコロナ前の2割から3割というところらしい。

 旅行に出かける層は若者が中心だ。中国の旅行プラットフォーム「携程(シートリップ、Ctrip)」によると、5月の連休に海外に出発するツアー客は18歳から40歳が7割近くを占める。人気の旅行先トップ5は、タイ、香港、日本、シンガポール、マレーシアの順番だった。日本は3位には入っているが、「爆買い」ツアーで人気のヨーロッパはまだランキング圏外である。

 一方、コロナ前にはニッチな旅行先だった中央・東アフリカ諸国やアラブ首長国連邦、ケニア、エジプト、イランなどの問い合わせや予約が増えているという。ビザ免除やビザ手続きが容易だからだという。

 タイ旅行を予約した黄さんは「コロナで長く不自由な生活だったから、ビザやホテル予約などの手続きは少なくして、旅行先では大自然を満喫したい。買い物はネットショッピングで十分かな」と話す。

 コロナで厳格な移動制限が敷かれていたこの3年。中国ではオンラインショッピングが急速に拡大した。旅行先で限られた時間をそのショッピングに費やすというスタイルに疑問を感じているのだろう。

 モノ消費から体験などのコト消費へ。世界的な消費スタイルのトレンドがコロナを経て中国にも押し寄せてきているのだろう。

 中国の検索サイトで「5月の連休(五一暇期)」と入れると、続いて「人の少ない場所」というフレーズが出てきた。この二つを一緒に検索する人が多いのだ。

 ポスト・コロナ時代、中国人旅行客は、これまであまり知られておらず、旅行客が少ない場所を探している。問題は、14億の中国人に知られていない場所がなかなか見つからないことだ。(c)東方新報/AFPBB News