【4月29日 AFP】ウクライナ東部の激戦地バフムート(Bakhmut)に近い軍事訓練キャンプで、重装備を引きずったり、耳をつんざくような武器を扱ったりする兵士の間を、眼鏡をかけた男性がねずみ色の小袋を抱えて軽快な足取りで歩いている。30代の兵士、オレクサンドルさんだ。

 迷彩色のヘルメットをかぶり、きれいに刈り込んだあごひげを蓄えたオレクサンドルさんは、その小袋から小さなドローンを取り出した。自軍の他の兵器と比較し、「私の武器はずっと控えめだが、部隊の目になっている」と話した。

 オレクサンドルさんは第5旅団の航空支援部隊で隊長を務めている。部隊は主に偵察や監視を行うが、手りゅう弾を投下できるよう特殊改造されたドローンも運用している。

 最も長い激戦が展開され、ロシア、ウクライナ両軍の攻防が続くバフムートの上空にドローンを飛ばす。「敵を特定して突撃部隊を送り込むことができる」とオレクサンドルさんは言う。

 現代の戦争では、スポッター(観測手)に代わり、ドローンが砲兵部隊にリアルタイムで情報提供できる。ただ、これは敵にとっても同様であるため、ドローン操縦士はロシア側のドローンの無力化も試みる。

■「ロシア人からの贈り物」

 隊員のビクトルさんは、ドローン迎撃装置を大きな書類かばんに入れている。装置の画面を見せ、「ほら、全部見えるだろう!」と不敵な笑みを浮かべた。「ウクライナではこういう機械は作っていない。敵側から盗んだ」と明かし、「ロシア人からの贈り物」だと語った。

 ウクライナ側のドローンも、墜落したり、撃墜されたりして失われた。オレクサンドルさんは100機前後を失ったとみている。

 オレクサンドルさんは、ドローン部隊に所属するのは簡単なことではなく、独創力や臨機応変さを学ぶことが求められると言う。

「大仕事だ。ドローンの航続距離の伸ばし方や、複雑な地形での離陸地点の確保など、操縦士はあらゆることを熟知しておく必要がある」と説明した。

 操縦士はまず、「ロシアの無線監視から存在を消す」ためにソフトウエアを改造しなければならないという。