【4月16日 AFP】ウクライナ東部ハルキウ(Kharkiv)州シニハ(Synykha)村のはずれで、白骨化が進んだロシア兵の遺体が見つかった。緑の軍服と黒いブーツを身に着けたままだ。通報を受け、ウクライナ特殊部隊が収容のため現地を訪れた。

 がれきの下敷きになったままの遺体や、農村部に残されている遺体が発見されることがある。ウクライナ当局によると、ロシア軍は兵士の遺体の搬送を行わないことが多い。

 春になったシニハ村の牧草地で遺体を発見したのは、牛を放牧していた10歳の少年だった。少年の家族から連絡を受け、遺体搬送部隊がやって来た。

 現地で取材した記者の一人が怖かったかと質問すると、少年は「別に」「怖がる理由はない」と答えた。

 遺体のそばからパスポート(旅券)が見つかった。水にぬれて文字の判別は難しかったが、持ち主は、ウクライナ東部の親ロシア派武装勢力が支配する「ルガンスク人民共和国」の48歳の男性であることは分かった。

 身元はすぐには特定できず、ウクライナ当局が調査を進めることになった。

■三つの目的を持つ重要な任務

「弁護士」を意味する「ユリスト」というコードネームを持つウクライナ兵(35)は、志願兵から成る部隊「J9」の隊員だ。J9は、ロシアとの交換材料になり得るロシア兵の遺体の捜索を任務としている。

 今回見つかった遺体についてユリストさんは、ウクライナ軍がハルキウでロシア軍を押し返した昨年9月以降放置され、風雨にさらされていたとの見方を示した。自爆か、爆発物を踏んで死亡したのだろうと話した。

 ユリストさんらはマスクはせず、手袋をして、遺体を袋に収容した。遺体はこの後、ハルキウ市内に運ばれ、冷蔵貨車で保管される。身元を特定するため、DNAサンプルも採取される。

 歯科治療を受けたカルテも役に立つと指摘した。「これほど完璧に歯がそろっているのを見たのは初めてだ」

 ユリストさんは、ハルキウ市内と周辺で、400体以上の遺体を収容してきた。

 部隊が収容する遺体は、ロシアと交換するための「遺体バンク」に加えられる。また、いずれ国際法廷でロシアを裁くための証拠となるほか、汚染や病気の感染リスクを減らす上でも有用だ。

 気持ちの良い任務ではないが、「この三つの目的を果たすために重要だ」とユリストさんは話した。(c)AFP