台湾断交に揺れるエビ養殖産業 ホンジュラス
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【4月11日 AFP】中米ホンジュラス政府が台湾と断交し、中国と国交を樹立したことで、台湾を最大顧客とするエビ養殖業に携わる数万人が不安を抱いている。
首都テグシガルパの南約80キロに位置する、太平洋に面したチョルテカ(Choluteca)の倉庫で働くロレナ・デ・ヘスス・セラヤさん(51)はAFPに対し、「台湾ビジネスをやめさせられたくない」と話した。セラヤさんは31年間、エビ養殖業界で働いてきた。
倉庫では800人の女性が働いている。箱詰めされたエビはここから冷凍・冷蔵コンテナで台湾やメキシコ、欧州へと出荷される。
しかし、左派のシオマラ・カストロ(Xiomara Castro)大統領は先月、台湾断交と中国との国交樹立を発表した。
これを受け、エビ業界で働く人々の間で、2008年に台湾との間で締結された自由貿易協定が破棄されるのではないかとの懸念が広がった。
事業家のヤデル・ロドリゲスさん(46)はAFPに「ホンジュラスのエビ業界にとって、高めの値段で買い取ってくれる台湾市場を失うのは非常に厳しい」と話した。「台湾向け価格は中国向けのほぼ2倍」という。
ロドリゲスさんは、中国の経済規模は台湾の12倍だが、「今回の政治決定で今後どうなるのか非常に不安だ」と語った。
ロドリゲスさんによると、ホンジュラス産のエビの年間輸出額は約1億ドル(約130億円)に上る。主要輸出品目の中では、コーヒー、バナナ、砂糖、パーム油に次ぐ第5位につけている。
2022年のホンジュラスの輸出総額は61億ドル(約8140億円)で、うち1億3000万ドル(約170億円)が台湾向けだった。
中国政府は、台湾と外交関係がある国とは国交を結ばない方針だ。中南米では近年、ニカラグア、エルサルバドル、パナマ、コスタリカ、ドミニカ共和国などがホンジュラスと同様、台湾と断交し、中国と国交を結んだ。
現在、台湾と国交を結んでいるのは13か国にとどまる。蔡英文(Tsai Ing-wan)総統は先週、このうち中米のグアテマラとベリーズを訪問した。
ホンジュラスでは1970年代にエビ養殖が始まった。現在までに養殖場は324か所に増え、総面積は2万4500ヘクタールにまで拡大した。
エビ養殖産業では約2万3000人が直接雇用されているが、間接的に携わっている人を含めると15万人がエビで生計を立てていることになる。
水産業者協会のフアン・カルロス・ハビエル会長は、養殖エビの輸出収入全体に占める台湾向けの割合は3分の1を上回っていると指摘する。
エビ関連企業で働くカルロス・アブレゴさん(28)はAFPに対し「政府が(台湾との)協定を破棄しようとしていることを、どの家庭も心配している」と話した。
エビ産業で働くペドロ・アントニオ・マルティネスさん(34)は「この国で失業したり、収入が減ったりすることはとても深刻な事態なんだ」と訴えた。(c)AFP/Noe LEIVA