【5月7日 AFP】鮮やかな羽飾りを頭に着け、たき火の周りで踊るエコ戦士の集団──ブラジル南部の保護区に住む「ショクレン(Xokleng)」と呼ばれる先住民が、絶滅の危機にある植物と自分たちの生活様式を守るため、植樹という手間のかかる作業のための儀式を行っていた。

 人口約2200人のショクレンは、ブラジルマツ(学名:Araucaria angustifolia)の大きな実を主食とし、その薬効で病気を治し、自分たちの精神的支柱だと考えている。

 だが、ブラジル農牧研究公社(Embrapa)によると、森林に生えるブラジルマツはかつての3%しか残っていない。

 ブラジルマツが絶滅すれば、「私たちショクレンも途絶えてしまう」と語るのは、イビラマラクラノ(Ibirama-Laklano)居留地に住むカール・ガクランさん(32)。妻のガペさん(36)と共に、ブラジルマツを守る組織「ザグ・インスティテュート(Zag Institute)」を設立した。これまでに植えた苗は推計5万本を超える。

 夫と同じように羽飾りを着け、子どもをあやすガペさんは「この木は私たちの母である聖なる木、私たちはその守り人」だと言った。

 高さ40メートルほどに成長し、天に向かって大きく枝を広げるブラジルマツの平均樹齢は約400年といわれる。だが、良質な木材として注目を集めたことと、農地開拓を目的とする森林伐採により消滅の一途をたどっている。

 ブラジルマツの種は発芽するまでに約1年かかる。さらに苗木から、種ができる成木に育つまでには12~15年必要だ。

 植樹の前、ショクレンの人々はたき火の周りで歌い、踊り、苗木の無事を祈る儀式を行う。

 ブラジルの多くの先住民と同様にショクレンも長年、農民や伐採業者による居留地への侵入と迫害に苦しんできた。

 グアラニ(Guarani)やカイガン(Kaigang)と呼ばれる他の先住民と共有する居留地は、軍事政権による強制退去以来、法的闘争の中心となっている。

 昨年末に退任した極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領は、先住民居留地を「もはや1センチも許さない」と宣言した「反先住民政策」を実行した。この政策をめぐっては最高裁まで争われており、ブラジルのすべての先住民の土地の運命を決める判例となる可能性がある。

 ショクレンの人々はブラジルマツの植樹も抵抗の一つだと考えている。

「祖父母から、先住民は大地を守るために生まれてきたのだと教わった。私たちは地球、森、そしてブラジルマツの守護者なのだ」とカールさん。「それらを守るためにはみんなの協力が必要だ」 (c)AFP/Anderson COELHO