【4月7日 AFP】ブラジル・アマゾン(Amazon)の先住民保護区の熱帯雨林が毎年数千トンの大気汚染物質を吸収し、年間約20億ドル(約2630億円)相当の呼吸器系・循環器系疾患の治療に掛かる医療費の抑制につながっているとする研究結果が6日、発表された。

 研究では、アマゾン熱帯雨林の森林火災が人間の健康に与える影響を分析した。10年にわたる研究結果は学術誌「コミュニケーションズ・アース・アンド・エンバイロンメント(Communications Earth and Environment)」に掲載された。

 森林火災で大気中に放出される大量の粒子は何百キロも移動し、遠方の都市の大気の質にも損害を与える。アマゾン先住民は森林火災から自分たちの土地を守ることにより、汚染物質を吸収する樹木を保存し、致命的な疾患の予防に貢献しているという。

 論文の筆頭著者である米非営利研究機関エコヘルス・アライアンス(Ecohealth Alliance)のポーラ・プリスト(Paula Prist)氏は「森林は樹木の葉の気孔を通じて火災由来の汚染物質を吸収することで知られているが、熱帯林の吸収力を推定したのは今回が初めてだ」と述べた。

 同氏によると、アマゾンの熱帯雨林全体では毎年2万6000トンの粒子を吸収する能力があり、うち27%を先住民族居留地が担っている。これは、先住民が管理している森林が毎年1500万例の疾病を予防し、少なくとも約20億ドルの医療費を節約していることになる。

 先住民居留地が森林保護に重要な役割を果たしており、その汚染吸収能力は気候変動の抑制に不可欠なことは数々の研究によって分かっている。

 先住民の指導者らは新しい研究結果が、居留地の保護を訴える新たな論拠になると歓迎している。(c)AFP