【3月24日 東方新報】長年のお茶文化を誇る中国で、コーヒー人気の上昇が続いている。上海市は世界で最もカフェ店舗が多い都市となり、コーヒーチェーン大手のスターバックス(Starbucks)にとって中国は米国に次ぐ世界第2の市場に発展している。

 中国チェーン経営協会などによると、中国のコーヒー市場は2018年の569億元(約1兆824億円)から2023年は1806億元(約3兆4356億円)に成長する見込み。わずか5年で3倍以上に拡大している。

 コーヒー店でラテを飲む自分を撮影してSNSに投稿したり、パソコンを使って仕事をしたり。挽きたてのコーヒーを味わえる店に訪れることは、若者を中心に一種のオシャレやステータスにもなっている。

 スターバックスが1杯30元(約570円)以上のメニューが多いのに対し、中国新興チェーンの瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー、Luckin coffee)は15~25元(約285~475円)のコーヒーを提供。スタバへ通うのは財布的にキツい学生たちに手が届きやすい価格帯となっている。さらに激安ドリンクスタンドを手がける「蜜雪氷城(Mixue)」が運営するカフェ「幸運咖(Lucky Cup)」は10元(約190円)未満のコーヒーを主力に、地方都市で勢力を拡大。

 若者が起業して営む個性的カフェも増えている。「カフェの魅力はコーヒーの味が30%、店の雰囲気が70%」とも言われ、店内を書斎のようにしたり、観葉植物でいっぱいにしたりなど、オーナーたちが独創的で落ち着いた店作りに励んでいる。

 一方で、コーヒー店が競争過多になっているという指摘もある。市民の間でコーヒー需要が増えていくとしても、出店ペースが急速なためだ。

 業界関係者によると、1杯18元(約342円)のコーヒーの場合、そのコストはコーヒー原料が2元(約38円)、砂糖・ミルク代2元、カップなどの包装材が2元で計6元(約114円)程度という。飲食物はコストの3倍で売ってようやく人件費や利益を確保できると言われるので、妥当な金額設定と言える。そのため過当競争の状態になって値下げ競争を始めてしまうと、「共倒れ」になる恐れがある。また、コーヒー豆の価格も高騰傾向にあり、現状は価格を維持するだけで精いっぱいだ。

 そんな状況で、いま注目されているのは「3線都市」「4線都市」と呼ばれる地方都市への進出だ。経済メディア「第一財経(Yicai)」が毎年発表する「都市ビジネス魅力ランキング」による基準で、2022年は国内337都市を一線、新一線、二線、三線、四線、五線都市に分類。一線都市は北京市、上海市、広州市(Guangzhou)、深セン市(Shenzhen)の4市。新一線都市は成都市(Chengdu)、杭州市(Hangzhou)、武漢市(Wuhan)など15市。二線都市は昆明市(Kunming)やアモイ市(Xiamen)など地方の中心都市で、三線都市は洛陽市(Luoyang)、桂林市(Guilin)など「地方における地方都市」が多く、四線都市となると山や緑が多く「田舎」に近いイメージとなる。

 中国では経済成長やライフスタイルの変化のスピードが地域によって異なるため、大都市ではカフェが林立している一方、地域にコーヒー専門店が1店もない中小都市もある。幸運咖のチェーン店はこうした地域を集中して開拓しており、他のチェーン店も地方市場へ進出を図っている。

 また、北京や上海で暮らす若者たちも都会の生活に見切りをつけて、故郷に戻ってカフェを開店する動きが目立ってきている。地方都市は家賃が安く、コーヒーメーカーがあれば多くの設備投資は必要ないため、独立してカフェを始めるハードルは低い。過熱する一方の中国のコーヒー市場は今後、地方都市も競争の舞台となる。(c)東方新報/AFPBB News