【3月23日 AFP】オーストリア・ウィーンのレオポルド美術館(Leopold Museum)では、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の「アッター湖のほとり」は2度、エゴン・シーレ(Egon Schiele)の「晩秋の木」は5度、傾けて展示されている。

 これらは22日に始まったプロジェクト「A Few Degrees More(もう数度)」で取り上げられている計15作品の一部。傾斜角度は、気候変動に歯止めがかからなかった場合、絵に描かれている場所の気温が何度上昇するかを表している。

 プロジェクトは、昨年11月に環境保護団体が同館に展示されているクリムト作品を保護していたガラスに黒い液体をかけたのをきっかけに立ち上げられた。

 ハンスペーター・ウィップリンガー(Hans-Peter Wipplinger)館長は、「気候変動のもたらす劇的な影響に対する意識向上に貢献したい」と説明し、11月の「攻撃」は「完全に間違っていた」と一蹴した。

 環境活動家らは、気候変動への意識を向上させるため、ウィーン以外でも英ロンドンや伊ローマなどで同様の抗議活動を行っている。

 レオポルド美術館では液体を掛けられた後、絵画の保護ガラスを増設し、監視を強化し、入館規制も厳格化した。

 だがウィップリンガー館長は、同様の事態を完全に防ぐことはできないと話す。新たな対策でコストが上昇し、保険料も上がったという。

 展示を訪れたデンマークの学生(18)は、「失われつつあるものに気付かされ、何かしなければと思わされた」とAFPに語った。

 ドイツから来た男性(71)は、「気候変動を矮小(わいしょう)化していると思う」と述べた。(c)AFP