【3月20日AFP】ロシアの首都モスクワから3000キロ以上東に離れたシベリア(Siberia)連邦管区ノボシビルスク(Novosibirsk)に住む牧師のロマン・ビノグラドフさん(41)と妻のエカテリーナさんは、自国が占領しているウクライナ東部出身の子ども5人を里子として受け入れている。

 ビノグラドフさんたちは里親としての経験が豊富で、現在は実子4人を含む子ども計16人を育てている。「助けを心底必要としている」子どもたちを救いたいのだと話した。

 ウクライナ政府や人権団体は、昨年のウクライナ侵攻開始以降、数万人の子どもがロシアやロシア支配地域に強制移住させられているとして非難。ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、「ロシアによるウクライナ人の子どもの拉致、強制養子縁組、再教育」は「戦争犯罪であり人道に対する罪」だと糾弾した。

 17日には国際刑事裁判所(ICC)が、ウクライナの子どもの違法連行をめぐる戦争犯罪の疑いで、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領に逮捕状を出した。

 ロシア側は、ウクライナから来た「難民」の子どもを受け入れているだけだと主張している。

 ビノグラドフさんはAFPに対し「私は誰もさらってなどいない。子どもたちもさらわれたとは思っていない」と述べた。

 ビノグラドフさんによると、里子を1人増やしたいと申請したところ、地元当局から電話があり、「ウクライナ人の子どもたちを受け入れてもらえるだろうか」と聞かれたという。

「『受け入れます』と答えた」とビノグラドフさん。「何の違いがあるだろうか。子どもはどこであっても子どもだ。どこの国かは関係ない」

 ビノグラドフさん夫婦は、父親が異なる3~12歳のウクライナ人きょうだい5人を養育している。女の子が4人、男の子が1人で、6か月前にモスクワからやって来た。それ以前にも、2人はすでに7人の里子を育てていた。

 取材したAFP記者は、子どもたちが楽しそうにそりで遊んだり、家の周りの雪かきをしたり、食事の支度をしたりする様子を見た。

 ビノグラドフさんは、このウクライナの子どもたちは親ロ派勢力が2014年から支配するルハンスク(Lugansk)の児童養護施設から来たと言い、親ロ派当局が発行した養子縁組に関する書類を見せた。

 実の母親は親権を剥奪されており、子どもたちは母親のことを覚えていないという。

 エカテリーナさんは「もちろん、子どもたちから質問される時がいずれ来る。その時には(母親を)捜すつもりだ。面会できるよう取り計らうと思う」と話した。

 ビノグラドフさんは、子どもたちは家族の一員として暮らす術を学んでいる段階で、今でも「ここが自分の家だ」と安心させる必要があると話す。

 最年少の子どもが幼稚園に行き始めた際には迎えに来るかどうか心配し、「いつ来るの、本当に来てくれるの」と聞かれたという。

 国際法では、健康上または安全上のやむを得ない理由での一時的な措置を除き、紛争の当事者が子どもを外国に避難させることは認められていない。(c)AFP