【3月11日 AFP】米ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)の企画展がサウジアラビアで初開催されている。同展の狙いは、ウォーホルが描いた半世紀前のニューヨークと現在のサウジアラビアの接点を見いだすことだ。

 企画展が開催されているアルウラ(Al-Ula)のアートプログラミングディレクター、スマントロ・ゴーズ氏は「ウォーホルは1950~60年代の米国の激動期、まったく新しい活気に満ちた若者文化の時代に生き、それを作品に反映させた」と述べ、「今は、サウジアラビアが大きな変化、変革の時期にある」となぞらえた。

 サウジアラビアは厳しい言論弾圧や同性愛を違法とする保守的な国として知られるが、一方でアートシーンや音楽シーンが急成長している。

 ウォーホル自身は、1970年代にイランとクウェートを短期間旅した以外、中東との関わりはほとんどなかった。当時の日記には「変わったコーヒー」を飲んだと不満が書かれ、「ここには歴史がない」と結論づけられていた。

 しかし、同展に協力した米ピッツバーグ(Pittsburgh)のアンディ・ウォーホル美術館(Andy Warhol Museum)館長パトリック・ムーア(Patrick Moore)氏は「現在起きているサウジアラビアの変化に、ウォーホルは魅了されただろう」と語る。「欧米人アーティストとして、この国でこれだけ大規模な展覧会を行うのは初めて、という点も気に入っただろう」

■テーマは「名声」

 砂岩の山々に囲まれた鏡張りのコンサートホール「マラヤ(Maraya)」の会場は三つに分かれている。

 まず最初に、ウォーホルの制作スタジオだったマンハッタン(Manhattan)の「ファクトリー(Factory)」で撮影されたビデオの上映コーナーがある。ファッションモデルのイーディ・セジウィック(Edie Sedgwick)や俳優のデニス・ホッパー(Dennis Hopper)、ミュージシャンのルー・リード(Lou Reed)といった時代のスターたちの姿がうかがえる。

 次に1960年代のジャクリーン・ケネディ・オナシス(Jacqueline Kennedy Onassis)やジュディ・ガーランド(Judy Garland)、1980年代のデビー・ハリー(Debbie Harry)やモナコの公妃となったグレース・ケリー(Grace Kelly)らセレブのポートレートが展示されるコーナー。

 そして最後の部屋には、ヘリウムを詰めた銀色のバルーンを浮かせたウォーホルの代表作「銀の雲(Silver Clouds)」が展示されている。

 同性愛者だったウォーホルの私生活についてはほとんど触れられていないが、それは「名声」という今回のテーマにそぐわなかっただけだとムーア氏は言う。「誰からも『ゲイとしてのウォーホルについて言及するな』とは言われていない。同性愛者としてこのプロジェクトに参加し、自分のアイデンティティーについて自由に話すことを認められている」