【2月22日 AFP】ロンドン・ファッションウィーク(London Fashion Week)で20日、ウクライナの3ブランドがコレクションを披露した。背広を着る機会がなくなった祖国の男性たちには不要になったネクタイをリメークしたデザインなど、ロシアによる侵攻が続く中、「不屈」のメッセージを発信した。

「クセニアシュナイダー(Kseniaschnaider)」「パスカル(Paskal)」「フロロウ(Frolov)」の3ブランドは、ミサイル攻撃や空襲警報でたびたび作業を中断されながらも、ウクライナ国内でコレクションに向けた準備を続けた。

 参加デザイナーは「コレクション制作は戦争に対する私たちの抵抗であり、すべてのウクライナ人の勇気を表している」との声明を出している。

 夫とブランドを立ち上げたクセニア・シュナイダー氏は「活動を続けることに意義がある」とバックステージでAFPに語った。

 同氏は昨年3月にキーウから避難を余儀なくされ、「二度と創作はできないかもしれない」との思いを抱いた。だが、戦時下でもファッションの仕事を続ける決意を固めてからは、ウクライナと、娘の留学先の英国にある新拠点を行き来しながら活動してきた。

「現実が悲惨でも、やめることはできない。自分が得意とすることを続けて創造力を発揮し、悲劇に満ちた世界に美をもたらす努力をするべきだ」「以前のようにファッションデザイナーとして活動するだけではなく、自分の文化と伝統を救わなければならない」と語った。

 クセニアシュナイダーの2023年秋冬コレクションは、ブランドのトレードマークであるデニムを使用。ブレザーやスカートには、ウクライナの男性たちが戦争に参加し、在庫過剰となったネクタイが利用されている。

「ウクライナの男性に今、ネクタイは必要ない。戦っているからだ」

 ユリャ・パスカル(Julie Paskal)氏は、3ブランドに関わるデザイナー4人は皆、ロシアの侵攻が続く中、ファッションの仕事を続けることに葛藤を覚えたと話した。しかし、決断は間違っていなかったと感じている。

 現在はドイツに拠点を置いているが、ブランドを続けるため、ウクライナに何度も帰国している。

 パスカルで使われている革素材のチョウのモチーフは、「生と死のはかなさ」を表しているという。

 戦争は「祖国に暗い時代」をもたらした。しかし、デザイナーたちにとって、ショーへの参加が前に進むための決意表明のようなものだと話す。「何もせず泣いてばかりはいられない。前に進み、自分ができることをしなければ」

 フロロウのデザイナー、イワン・フロロウ(Ivan Frolov)氏は、今回のコレクションではウクライナの「文化遺産」にインスピレーションを得た。豊穣(ほうじょう)を象徴するウクライナの麦の穂の手編みのセーターや、スワロフスキークリスタルをちりばめたコルセットドレスを披露した。(c)AFP/Helen ROWE