【2月21日 東方新報】中国は今や世界一の「留学生大国」だ。米国国際教育研究所(IEE)によると、2020年の世界の留学生は約560万人。このうち中国人は約160万人を占め、日本人の海外留学生(2018年度で11万5100人)をはるかに上回っている。

 その中国で最近は、「留学の低年齢化」が進んでいる。大学や大学院から留学するのでなく、小中高校生のうちから子どもを留学させたい保護者が増えている。学習サービス大手の新東方教育科技集団(New Oriental Education & Technology Group)がまとめた「2022年中国留学白書」によると、「子どもが高校生の時に留学させたい」と考えている保護者は27%、「中学までに留学させたい」は49%に達する。

 特に人気なのが、英国の寄宿舎学校(ボーディングスクール)だ。18歳までの生徒が寮で生活しながら勉強する学校で、留学生は英国人の生徒と一緒に学びながら英国の義務教育修了時の全国統一試験(GCSE)や国際バカロレアなど、国際的に通用する資格が受けられる。学費だけで日本円で年間300万~600万円もするのだが、子どもを学ばせたいと考える保護者は増える一方。コロナ禍の期間においても希望者はほとんど減少していないという。

 留学の低年齢化は2010年代に入り、目立ち始めた。中国の急激な経済成長とともに所得が大幅に向上した家庭が増えたことと、受け入れ国側の入試制度のハードルが低くなったことが大きな要因だ。また、先進国では少子化や学費の高騰により、名門校でも学生の確保が課題になりつつある。近年は英国のエリート中学・高校が訪中団を結成し、北京市や上海市などを巡回して学生の誘致に努めている。

 何より、コロナ禍においても早期留学熱が収まらないのは、2021年7月に中国政府が発表した「双減」政策の影響も大きい。学校での宿題を減らし、塾通いも減らす「ダブル削減策」だ。学校の宿題量について学年別に上限を設けた上、学習塾に至っては「民間経営を非営利団体に転換すること」「長期休暇中の講義をしてはいけない」などと定め、実質は「塾禁止令」という内容。全国の学習塾が次々と倒産に追い込まれている。

 過熱する受験競争を抑え込む狙いだが、1人あたりの教育費を減らすことで出生人口を増やし、急激に進行する少子高齢化を防ぐ狙いもあるといわれる。しかし、「国内の勉強が制限されるなら、海外でレベルの高い教育を」と早期の海外留学熱を高める形となった。廃業寸前に追い込まれた大手学習塾の中には、留学あっせんビジネスに活路を切り開く動きもある。

 留学の低年齢化には当然、批判もある。「中国語の理解力も外国語の習得も中途半端になり、コミュニケーション能力に問題が出る」「海外の生活や学習環境に適応できず、学習意欲が衰えるだけでなく精神面の問題を抱える」という報告もある。

 ただ、中国では今も、有名大学に入ればその後の就職も有利という傾向は強い。また、多くの家庭が一人っ子のため、「一流大学・一流企業に進み、人生の勝者になってほしい」と子どもの進路への親の情熱はすさまじいものがある。学歴偏重の激しい競争社会が続く限り、子どもへの教育熱は簡単に収まりそうにない。(c)東方新報/AFPBB News