【2月22日 東方新報】中国の牛乳業界が「寒波」に見舞われている。

 2022年の牛乳輸入量は前年比27.5%減の72万2000トン、輸入額は23.1%減の6億7000万ドル(約900億1450万円)に落ち込んだ。

 中国の国内牛乳生産量は年間3000万トン台を維持しており、世界第3位の生産大国。それでも国内消費量の70%にとどまり、欧州などから長期保存できるロングライフ牛乳を輸入している。

 輸入減少の理由について、浙江省(Zhejiang)寧波市(Ningbo)の貿易商、張元(Zhang Yuan)さんは「ウクライナ情勢の影響により、各国で生産コストが急上昇した」と説明。「輸入牛乳の粗利益は20%ほどだが、輸入価格は30%以上値上がりしており、商売にならない」と嘆く。

 コスト高は国内の酪農産業にも大きな影響を及ぼしている。トウモロコシや大豆、牧草などの飼料の価格が軒並み高騰。天津市(Tianjin)の酪農家・王(Wang)さんは「トウモロコシの価格は3年間で1.5倍に増えた。生乳の平均販売価格は1リットル約3.8元(約74円)だが、コストは4.2元(約82円)に跳ね上がっている」と訴える。

 中国国内では牛乳の需要が低迷しており、値上げに踏み切ることは難しい。中国の伝統的な食生活の中で、乳製品は大きな割合を占めていない。最近は以前より牛乳を飲む人が増え、乳製品を使ったデザートの需要も高まっているが、コロナ禍による供給網の停滞や「ステイホーム」の影響により、需要が伸び悩んでいる。

 山東省(Shandong)や河北省(Hebei)、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)など酪農が盛んな地域では、牛乳の生産過剰問題が起き、乳牛の売却や殺処分を考える酪農家も増えている。山東省の酪農家、李さんは「700頭以上の乳牛を飼っており、エサ代だけで1頭につき1日70~80元(約1371~1567円)かかる。1か月で50万元(約979万円)の赤字を抱えているが、事業を拡大した際の借金もあるので、やめたくてもやめられない」と打ち明ける。売らなければ収入が入らず、売っても赤字になるという悪循環だ。

 苦境に陥った乳牛業界をサポートするため、河北省は2022年に2500万元(約4億8993万円)の補助金を支出。今年に入り、さらに1500万元(約2億9395万円)の補助を決定した。山東省も生産コストが販売価格を上回る場合、損失を補填(ほてん)する措置を行う。

 中国乳業協会は1月9日、全国の地方政府に対し、乳業業界への支援策を実行するよう文書で要請した。生産体制の合理化や供給ルートの効率化などで行政の後押しを求めている。(c)東方新報/AFPBB News