【2月16日 東方新報】中国では、1日3つの干しナツメ「紅棗(Hongzao)」を食べると「老化を防ぐことができる」といわれている。そのまま食べると、甘酸っぱい干しリンゴのような味。古くから薬の材料である生薬「大棗(たいそう)」としても使われてきた。現在、中国ではどのスーパーマーケットにも干しナツメの特設コーナーがあり、スープや鍋の具材からお菓子まで幅広く使われる食材として、中国の庶民に愛されている。

 なかでも高級品として人気があるのは、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)の乾燥地帯で育った大粒で肉厚な干しナツメだ。中国の文献によると、ナツメは古くから黄河(Yellow River)の中下流域で栽培されていたが、晋の時代に長江(揚子江、Yangtze River)流域に伝わり、さらにシルクロードを通じて現在の新疆ウイグル自治区にも広がっていったとされている。現在では、新疆のナツメ生産量は中国全土の49%を占める特産品になっている。

 かつて上海や北京などの大都市から遠く離れた新疆ウイグル自治区の農村地帯は、貧困地域の代名詞だった。しかし、輸送網が整備され、農産物の鮮度を保ったまま輸送できるようになった。また、果物市場が拡大し、ナツメやフルーツなどの特産品がよく売れるようになり、農村の生活も一変した。

 特に、新型コロナウイルスの感染が広がった2020年以降はライブコマース市場が急速に伸びている。どんなへき地からでもネット環境さえあれば農産物を直販できるようになったのだ。海外ではTikTokとして知られる中国のSNS「抖音(Douyin)」には、生産者の畑や地元の市場などから生中継で農産物を販売するライブコマースのチャンネルが次々と登場している。数百万人のフォロワーを抱える人気アカウントもあり、そこで紹介された農産物は文字通り一瞬で完売してしまう。

「今年のナツメは種が小さくて、皮が薄く、果肉は厚いよ。きめも細かくて品質がいい。特級ナツメが1キロ30元(約582円)、1級は1キロ25元(約485円)、2級が1キロ12元(約232円)だよ」

 新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州(Bayingolin Mongol Autonomous Prefecture)チャルクリク県(Ruoqiang)のナツメ畑では、ネットを使った生中継でアカウント名「ナツメ姉さん」が自分のナツメ畑をバックにして威勢良く売り出した。

 チャルクリク県一帯は昼夜の気温差が大きく、日照時間が長いことから甘いナツメが育つことで知られる。生中継アカウントには通販サイトがリンクされており、商品を気に入った視聴者はそのまま購入できるシステムだ。中継スタート後、あっという間に2トンが完売した。

 農業と技術を組み合わせたアグリテックが世界で注目されている。中国のアグリテックは都市から遠く離れたナツメ畑から始まっているのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News