【2月19日 東方新報】昨年暮れに厳格なゼロコロナ政策を大幅緩和した中国で新たな課題が持ち上がっている。使われなくなった街頭のPCR検査ボックスが放置され、なかにはゴミ箱状態になっているものまであるためだ。

 紹興酒の産地として知られる浙江省(Zhejiang)紹興市(Shaoxing)の地元メディア「紹興網」は、ゴミ袋が積み上げられた検査ボックスの内部の写真付きで次のように報じている。

「昨年12月末、紹興市は常設のPCR検査ボックスの運用を中止し、街頭で検査を待つ人々の行列も消えた。以来、街頭や路地にある検査ボックスは放置されたままになっている。ホコリをかぶったり、汚れたり、歩行者の通行に影響を与えるものもある。かつて重要な役割を果たした検査ボックスの放置は、街のイメージダウンや公的資源の浪費につながっている」

 2020年初めの感染拡大以降、世界に類を見ない厳格なコロナ対策を実施してきた中国では、市民は事あるごとにPCR検査を受けてきた。数人の感染者が出ただけでも地域住民全員がPCR検査を求められていた。

 中国政府が、面倒な検査を多くの市民に迅速に受けてもらうための「秘密兵器」として導入したのが検査ボックスだった。その歴史は意外に浅く、2022年5月に中国政府が「住民が徒歩15分以内の場所でPCR検査が受けられるように設置するように」と地方政府などに要請し、瞬く間に中国全土に検査ボックスが誕生した。

 急いで導入された検査ボックスには統一された基準はない。検査スタッフが感染しないように密閉された十数平方メートルの小屋に、大きなゴム手袋が突き出た窓口が設置されている構造が多い。検査を受ける市民はボックスの前に立ち、検査スタッフは小屋の中から窓とゴム手袋越しに鼻孔などから検体を摂取するシステムになっている。

 ゼロコロナが撤廃され、大量に発生した遊休資産をどうするか。縦割りの行政システムが苦手とする設備の用途変更問題だが、いくつかの都市では住民本位に工夫した再活用方法が模索されている。

 北京駅の近くの検査ボックスと、江蘇省(Jiangsu)の蘇州駅(Suzhou Station)前の検査ボックスは、駅に到着した出稼ぎ求職者向けのスペースに様変わりした。中国の出稼ぎ労働者は、春節(旧正月、Lunar New Year、今年は1月22日)連休明けに新たな仕事を探すことが多く、駅前での求職サポートは役立ちそうだ。

 また、浙江省杭州市(Hangzhou)では、9月のアジア大会に向けて、人通りの多い場所にある170以上の検査ボックスを来場者向けのカウンターに改装した。来場者とスタッフ双方の感染防止にもなる上、臨時の窓口需要に役立ちそうだ。アジア大会は、コロナ流行により、1年延期されていた。

 ほかの地域でもゼロコロナ政策の緩和後、各地の病院の発熱外来が満員状態になったことから、検査ボックスに医療スタッフを配置して、臨時発熱外来にする動きが広がっていた。ただ、発熱外来の需要は感染状況に左右されるため、いずれは検査ボックスの再活用方法を模索せざるをえなくなりそうだ。

「だれの家からも徒歩15分圏内にある公共施設」であるPCR検査ボックス。放置すればゴミの山。逆に、いい活用法が見つかれば、夢のあるポストコロナの時代を描くことができそうだ。(c)東方新報/AFPBB News