【2月19日 東方新報】最近、中国の大手動画配信サービスが展開した「月額1元(約19.5円)キャンペーン」が話題となった。好きな映画やドラマが1か月、たったの1元で見放題なら誰もが飛びつきたくなる。だが、話題となったのはその後の展開。会費1元は最初の1か月だけで、翌月からは自動的に月額12元(約234円)の1年契約が結ばれる。途中解約すれば、本来の会費である月額25元(約489円)で利用した期間分を払わなければいけないというのだ。利用者の多くが、キャンペーンにそんな契約や条件があったとは知らず「だまされた」と感じたのだ。

「長期のサブスクは必要ないから話題のドラマを見終わって解約したところ、すぐに『24元(約469円)課金されました』という通知が来ました」

 こう話すのは、人気ドラマを見るためにこのキャンペーンを利用した人。会社の側は「これはあくまでもサービスキャンペーンで、通常の月会費25元を払えば途中解約できるときちんと表示してある」と回答したが、実際には小さな文字で書かれてあったり、支払い画面をクリックしないと出てこなかったりと、利用者にとって分かりやすく示されているとは言い難かった。

 このような、特別キャンペーンやお試し期間でスマホのアプリを使ったら、いつのまにか継続契約されて想定外の課金をされたというトラブルが増えている。

 その一番の原因は、サービスの利用や会員になるのは簡単だが、利用の中止や退会するのは分かりにくいアプリの仕組みだ。自身のアカウントにログインしてみても契約継続の画面はすぐ出てくるが、「契約の自動更新を止める」といった画面はなかなか見つからない。そのサービスのサイトからではなく、そこが提携している支払代行業者のサイトまでいかないと解約できないこともある。

 ネット取引に関する規定に従えば、アプリなどで自動的に契約更新がなされる場合には5日前に利用者に通知しなくてはならない。しかし、実際にはこのルールを守っていない業者も多い。結局、利用者自身が細心の注意を払って、契約条件などを理解することが必要だ。

「アプリのサブスクを始める時には、決して衝動的にならず、余裕があって集中できる時にすべきです。そうすればさまざまな『ワナ』が見えてきます」

 SNSに書き込まれた「自動更新のワナにはまらないための心得」に、大量の「いいね」が押されたのもうなずける。

 話を動画配信サービスに戻すと、自動更新の「罠」以外にも、最近は多くの会社があの手この手を使って、会費を上げたり追加料金を求めたりしている。一部では2020年から値上げを繰り返し、月会費が6割も上がったものもあるという。ところが、会費が上がっても満足度は必ずしも伴わない。

「会員になれば、広告が入らない」とうたわれながら、有料会員になったところで、無くなったのは作品の前に挿入されていた広告だけ。視聴中に「会員だけにおすすめ」という画面が開くので、いちいちクリックして閉じなければいけなかったなどという話もある。有料会員になったにもかかわらず、作品によっては1本ごとの追加料金を求められることもある。もちろん映像作品には著作権があり、鑑賞する側はきちんと金を払わなくてはいけない。ただ問題は、配信サービスの側が、事前にその仕組みを分かりやすく説明しているか、さらに課金額が妥当かどうかだ。

 各サービスが競って金集めをするようになった背景について、ある業界関係者は、有料会員数の伸び悩みがあるという。中国政法大学(China University of Political Science and Law)の陳忠雲(Chen Zhongyun)教授は「会員数減少の根本的な原因は、優良なコンテンツを提供できていないからだ」と手厳しい。「隠れた値上げやだますような課金をしたところで、そのプラットホームの長期的な発展のためにはならず、コンテンツを充実させることこそが王道」と強く指摘する。

 1つのテレビを囲んで、電波にのってきた番組を皆で見ていた時代が、ふと懐かしくもなる。(c)東方新報/AFPBB News