【2月9日 AFP】トルコとシリアを襲った地震の後、シリア北西部イドリブ(Idlib)の自宅から脱出したマレク・イブラヒムさん(40)は、これで一安心と思ったのも束の間、親族30人の安否が分からないとの知らせを受けた。

 イブラヒムさんのおじやいとこの一家全員が、イドリブから40キロ離れたベスナヤ(Besnaya)村で倒壊した建物のがれきの下敷きになった。地元住民や救助隊の助けを受け、これまでに親族10人の遺体を収容した。

「親戚全員が居なくなってしまった。これは大量殺人だ」と悲痛な心情を吐露した。

 イドリブの自宅から妻と8人の子供たちは何とか脱出して助かったものの、ベスナヤ村の倒壊した建物の下敷きになった親族が助かる可能性はほとんどないと考えている。

 イブラヒムさんは、つるはしでがれきを取り除きながら、「遺体を収容するたびに、一緒に過ごした素晴らしい時間を思い出した」とむせび泣く。オリーブの木が点々と生える牧歌的な風景が広がっていたベスナヤ村周辺には、がれきの山があちこちにできている。

「楽しい時を過ごし、冗談を言い合うこともあったが、もうそれもかなわない」とおえつを漏らした。

 今回の地震では1万人以上が死亡し、うち2600人以上がシリア国内の犠牲者だ。

 イブラヒムさん一家は、2011年以来続くシリア内戦で、同国南部からイドリブに避難してきた。被災後、降り注ぐ雨の中、屋外で過ごしたが、ベスナヤ村の親族が住む建物が倒壊したとの報を受け、40キロ離れた村に急いでやってきた。

■「言葉に言い表せない悲劇」

「誰かが生存しているのではないかとのいちるの望みもあり、徹夜でがれきの山を掘った」と話したが、心中では親族が生存している可能性は極めて小さいとも感じていた。

「言葉には言い表せない悲劇だ。あらゆる意味で、われわれは悲運を定められている」とイブラヒムさんは言葉を継いだ。

 ベスナヤ村の住民や救助隊ら数十人が倒壊した建物のがれきの山に集まり、生存者が埋まっていないか呼び掛けながらがれきを取り除いていた。生存者が救出されると喜びの涙を流し、親族の安否を待ち続ける人を慰めた。

 南方に約20キロ離れたラマディヤ(Ramadiya)村で、きょうだいや8人のおいを探し続けていたアイマン・ディリさんはすすり泣いた。

 数時間にわたってがれきを掘り進め、12歳のおいの遺体を見つけた。ディリさんは、まだ生存している親戚がいるのではないかとの思いから、捜索を諦めなかった。倒壊した建物から救助隊の援護もあり、生存者を助け出すことができたためだ。

 ディリさんは粉々になったコンクリートに視線を向けながら、「建物の惨状は見て取れるが、最良の事態を望むことしかできない」と話し、「生死にかかわらず、きょうだいに神のご慈悲がありますように」と言葉を絞り出した。(c)AFP/Omar Haj Kadou