【2月10日 AFP】国際的な暗号解読チームが今週、英国史上最も論争の的となってきた人物の一人、スコットランド女王メアリー(Mary, Queen of Scots、メアリー・スチュアート、Mary Stuart)による書簡を発見し、暗号を読み解いたと専門誌「クリプトロジア(Cryptologia)」で発表した。

 メアリーが暗号で書いた書簡が存在することは長年、うわさされていた。今回発見された書簡は、フランス国立図書館(BNF)のデジタルアーカイブで誤って分類されていた。57通に及ぶ書簡には約5万語の未知の単語が含まれていた。

 カトリック教徒のメアリーは、プロテスタントのいとこであるエリザベス1世(Queen Elizabeth I)を脅かす存在と見なされイングランドに幽閉され、1587年にエリザベス1世の暗殺を企てたとして斬首刑となった。暗号化された書簡は幽閉中の1578年から1584年に書かれた。

 書簡を解読したのは、国際的な暗号解読プロジェクト「ディークリプト(DECRYPT)」のメンバーである3人の暗号研究家、ジョージ・ラスリー(George Lasry)氏、ノルベルト・ビエルマン(Norbert Biermann)氏、友清理士(Satoshi Tomokiyo)氏。

 フランス国立図書館のデジタルアーカイブで、16世紀前半のイタリアの文書と分類されていた暗号書簡が発見されたのは偶然だった。「フランス国立図書館でメアリー・スチュアートの資料を探そうと思っていたとして、一番行きそうにない場所だ」とラスリー氏はAFPに語った。

 チームはまず、文章がイタリア語ではなくフランス語であることに気付いた。女性形が使用されていたことから書き手は女性で、「私の自由」「私の息子」といったと表現から、幽閉され子どもがいる人物と考えられた。

 突破口となったのは「Walsingham(ウォルシンガム)」という単語だった。

 フランシス・ウォルシンガム(Francis Walsingham)は、エリザベス1世の秘書長官で、スパイ活動を統括していた。ラスリー氏によれば、1586年のエリザベス1世の暗殺を計画した「バビントン陰謀事件(Babington Plot)」で計画を支持するようメアリーを「陥れた」のはウォルシンガムだったという説もある。

 発見された書簡のうち8通は英国の公文書館に既に保管されていたが、これはウォルシンガムが1583年半ばにフランス大使館にスパイを送り込んでいたためだとラスリー氏は説明した。