【2月13日 AFP】ウクライナ東部ドンバス(Donbas)地方のいてつく荒野で、カムフラージュ用の網の下からT64戦車が不気味な姿を現した。前進するにつれ、キャタピラの下の雪が泥に変わっていく。

 この旧ソ連製の古びたT64が、ウクライナ軍の対ロシア戦の主力だ。近距離にあるのか、前線から後方へ遠く離れているのか目視では確認できない敵の拠点に対し、直接攻撃を行ってきた。

 ウクライナを支援する西側諸国は、何週間も逡巡(しゅんじゅん)した末にようやく最新鋭戦車の供与に同意した。ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は、これで東部の戦局が一気に好転する可能性があると期待を示している。

 T64の砲手イーホル・ホンコさん(26)は、新型戦車の到着が待ち切れない。また、今差し迫って必要なのは砲弾だとも話した。

 T64はホンコさんが生まれる24年前に造られたもので、老朽化は明らかだ。砲弾の詰まりやオイル漏れ、エンストなどで緊急修理が必要になることもある。

 ホンコさんと同じ部隊に所属するウォロディミルさん(57)は1980年代半ば、旧ソ連軍で兵役に就いていた際にもT64に乗っていた。幾分かは改良されているものの、大きな変化はない。

 普段の職業は大工だというウォロディミルさんは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて従軍。T64に再び乗り込んでいる。

 ウォロディミルさんは38トンの戦車を巧みに操縦し、時速50キロで荒野を走る。「戦車が必要だ。われわれの部隊に新型は一つもないのだから」と訴えた。「何か一つ壊れたと思うと、次々故障する。とにかく戦車が要る。(新型戦車は)兵器の性能も良く、壊れない」と繰り返した。