【1月31日 東方新報】中国人が旧正月の春節(Lunar New Year)を迎えるにあたって、欠かせないモノとは、生まれ育った土地によってそれぞれ違う。首都北京なら大みそかに食べる熱々の水餃子や公園などで開かれる庙会(Miaohui)と呼ばれる縁日。南部の広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)では大みそかに家族で食事をした後に、市内の各所で開かれる花市をぶらつくのがなくてはならない習慣。春節に飾るための花を買いに行くのだ。

 中でも広州市で有名なのは、100年もの歴史を持つという越秀区(Yuexiu)の西湖路を中心に開かれる花市。一昨年、昨年は新型コロナの影響で開かれなかったが、コロナ対策の緩和で今年は本来のにぎわいが戻った。

 西湖花市が開かれたのは、1月19日から旧暦の大みそかにあたる21日までの3日間。会場は春の到来を先取りするかのような色とりどりの花と人混みで埋まった。

「すべてのことがコロナ禍以前にもどって、みなさんが健康でいられるといいですね」。再開を喜ぶ何剣龍(He Jianlong)さんは、この花市で十数年前から店を出しているという。広州生まれで幼い頃から花市に親しんできた何さんは、広州人は花市に郷愁を感じるし、芳香の充満する花の海の中をぶらついて、来るべき新年の活力が満たすのだと説明する。

 何さんは、コロナ禍でお客さんの消費マインドが変化したのではないかと心配していたが、それは杞憂(きゆう)だった。

 例年だと最もにぎわうのは最終日となる大みそか、しかも夕方から午前0時。同日の売り上げが全体のほぼ半分を占めるそうだが、今年は例年より人出があり、まるで毎日が大みそかのような慌ただしさだったそうだ。

 人びとがこの時期に花を求めるのは、縁起を担ぐため。花はそれぞれに違った意味合いを持つ。例えば人気のコチョウランは「願いがかなう」、黄色い丸々とした実をつけるツノナスは「5世代が同じ家に暮らせる」などと考えられている。

 近年はチューリップやヒヤシンスなどの輸入花も人気だが、やはり昔ながらのスタイルを大事にする人は多い。ある男性客はこう話す。「好む花は皆だいたい同じだと思います。昔、両親が好んだ花を、今は私も好んでいます。花の持つ意味は代々受け継がれており、伝統です」

 長いコロナ禍生活を経てやっと戻った花市のにぎわい。人々が花に託す願いはより強いに違いない。ぜひ、全ての人に素晴らしい1年が訪れて欲しいものだ。

 西湖花市では、3日間の来場者は150万人を超え、売り上げは約1200万元(約2億2990万円)が見込まれるという。(c)東方新報/AFPBB News