【1月25日 東方新報】東南アジアで中国語の教育熱が高まっている。東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって中国は最大の貿易パートナーとなり、ビジネス面から関心が高まっている。

 カンボジア政府は昨年11月、国内3州の中学・高校20校で外国語学習科目の一つに中国語を採用することを決めた。中国政府と結んだ協力プロジェクトの一つ。首都プノンペンのヘム・シナレス(Hem Sinareth)教育局長は「私立学校に通う多くの生徒が第2言語として中国語を学んでいる。このプロジェクトで、より多くの生徒が中国語を学ぶことができ、高収入の職につく機会も増える」と歓迎する。

 カンボジアでは近年、中国系企業の進出が増えており、コロナ禍以前は中国からの観光客が増加。中国の存在感は高まっている。大学で中国語を学び、中国資本の企業に就職した男性は「カンボジアで僕ぐらいの年齢だと収入は300~500ドル(約3万9123~6万5205円)程度ですが、僕の給料はその2倍ほどです」と笑顔を浮かべる。

 中国と国境を接するラオスでも、空前の中国語ブームが起きている。2021年12月に中国-ラオス高速鉄道が開通。ラオスにとって初めての本格的な鉄道で、ラオス側の鉄道も中国政府や中国企業が事業費を負担している。中国系企業への就職を夢見る若者が増え、1937年にラオスの首都ビエンチャン(Vientiane)に設立された中華学校・寮都公学は、ラオス語と中国語のバイリンガル学校となっている。

 ミャンマーでも中国語熱は高まっており、マンダレー(Mandalay)福慶学校の李祖清(Li Zuqing)校長は「若者の間で外国語取得は就職の重要スキルとなっており、中国政府公認の中国語検定試験HSKの受検者が急増しています」と話す。タイでは富裕層の間で、中国語を教える幼稚園やインターナショナルスクールに子どもを通わせる家庭が増えている。

 ASEANの貿易相手国として中国は急速に台頭している。貿易額は2010年の2402億7000万ドル(約31兆3336億円)から2020年には5252億1800万ドル(約68兆4937億円)と2.2倍になった。特に加盟国10か国のうちミャンマーは9.2倍、カンボジア7.6倍、ベトナム4.6倍、フィリピン3.8倍、ラオス3.5倍という急増ぶりだ。ASEANの貿易全体のシェアで言うと2010年の12.0%から2020年は19.4%に拡大。貿易相手2位以下の米国(2020年で11.2%)、欧州連合(EU、同8.4%)、日本(同7.8%)を大きく引き離している。それだけに「中国語が話せれば将来の可能性が広がる」と考える人が増えている。

 東南アジア各国から中国への留学生も増えている。ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)は留学生を最も受け入れる省の一つ。広西外国語学院(Guangxi University of Foreign Languages)はタイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、マレーシアなどの70校以上の大学と提携し、1500人の留学生が中国語と中国文化を学んでいる。

 2020年から始まったコロナ禍により国境を越えた人的往来は大きく制限されているが、リモート講習やオンライン交流でつながりを保とうとしている。中国政府が各国の大学などと提携して中国語と中国文化を教える教育機関「孔子学院(Confucius Institute)」などを通じ、中国語人口のすそ野を広げている。(c)東方新報/AFPBB News