【1月18日 東方新報】子どもをわざと驚かせたり怖がらせたりする動画を親がSNSに投稿することが中国で増えており、「虐待にあたるのではないか」と議論を呼んでいる。

 最近話題になったのは、子どもがペットにしていたカニを親が勝手にゆでてしまい、さらに子どもに食べさせる動画だ。父親が泣きじゃくる子どもに「食べるのか食べないのか?食べないならお父さんが食べるぞ!」と迫り、カニを食べた子どもに「味はどうだ」と聞いて、子どもが「おいしい」と答えている。動画が中国のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」にアップされると反響を呼び、「子どもがかわいそう」「教育上よくない」という批判も多かった。SNSでは同様に、ウサギやニワトリ、アヒル、魚などのペットを料理してしまう動画が投稿されている。

 中国のSNSでは以前から、「萌娃搞笑視頻(かわいい赤ちゃん・子どもの面白動画)」が人気ジャンルとなっている。小さな子どもの日常を撮影し、見る側がクスッとするような動画が中心だが、最近はその中に「虐待系」とでも言うような投稿が目立っている。

 例えば、子どもが書いていた絵を親が「ヘタクソ!」と言って目の前で消してしまい、子どもが怒り出す様子を撮影。画面に「子どもは成長するにつれ、怒りっぽくなります」など説明までつけている。また、高所にあるガラス張りの通路の上に子どもを放置し、怖くて動けず泣いている姿を撮影する動画もある。

 こうした動画は、意図的に子どもを怖がらせたり怒らせたりして、アクセス数を増やして収入を得ようとしているとみられる。

 首都師範大学(Capital Normal University)教育学院教育政策・法律研究所の蔡海竜(Cai Hailong)副所長は「低レベルな娯楽的関心を集めるため、営利目的で動画を撮影している親がいる」と指摘。中国人民大学(Renmin University of China)教育学部の周詳(Zhou Xiang)准教授は「こうした体験は子どもにトラウマ(心的外傷)を与え、親子の信頼関係を損なう恐れがある。動画が拡散され残り続ければ、子どもの将来に悪影響を及ぼしかねない」と訴える。

 中国では、子どもへの虐待を禁ずる未成年者保護法や、保護者が家庭教育に責任を持つ家庭教育促進法がある。中国メディアは「虐待、拷問レベルの悪質動画の投稿は、違法行為として取り締まるべきだ。動画投稿プラットフォームの事業者はこうした動画を削除し、アカウントを停止するなど責任を持った対応をすべきだ」と求めている。(c)東方新報/AFPBB News