【1月29日 AFP】小さな鉄製の籠に押し込められ、異常に太ったり、感染症にかかったりしたキツネや、きょうだいの死骸を食べる姿も──。AFPは、動物愛護団体がフィンランドの毛皮農場を極秘に撮影した映像を入手した。映像は、毛皮産業の闇を映し出している。

 フィンランドは年間100万枚近くの毛皮を生産しており、欧州では最大の生産国で、世界でも中国に次ぐ規模だ。映像は、禁止を求める圧力にさらされているフィンランドの毛皮産業の問題を浮き彫りにした。

 左翼同盟のマイ・キベラ議員はAFPに対し、「フィンランドの毛皮農場は現時点までに禁止されているべきであり、実現していないことは恥ずべきことだ」と語った。

 昨年12月には、欧州市民イニシアチブ(European Citizens Initiative)で欧州全域での毛皮産業の禁止を求める署名が100万筆に達し、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会(European Commission)に対して立法を提案できる状況になった。

 サンナ・マリン(Sanna Marin)首相は2020年、左翼同盟などに追随して毛皮産業の禁止に賛同する意向を表明した。

 だが、フィンランド議会では、全面禁止を支持する議員は少数派だ。3億6000万ユーロ(約510億円)の輸出額を誇る毛皮産業は、一部の農村部にとっては重要なものとされているためだ。

■「ぞっとするほどひどい」状態

 AFPに映像を提供したフィンランドの動物愛護団体によると、映像は昨年、6か所の毛皮農場で極秘に撮影された。動物の健康管理を認証しているフィンランド毛皮生産組合(FIFUR)はAFPに対し、このうちの4か所に認証を与えていると認めた。

 AFPが公開したのは、認証済みのこれら4か所の映像だ。その中には、耳や尾に感染症が見られたり、目の病気を患ったりしているキツネが映っていた。また、異常に太っているため本来の姿が想像できない個体もいた。

 活動家のクリスト・ムーリマー氏は、「これらの農場の動物の状態はぞっとするほどひどい」と批判した。

 同氏は、フィンランドの動物保護に関する法律は「欧州の基準から大きく後れを取っている」のが現状で、「動物の観点からすれば、フィンランドのあらゆる毛皮農場が大なり小なり同じような状況だ」と指摘した。