【1月23日 東方新報】中国人が一年で最も大切にする春節(旧正月、Lunar New Year、今年は1月22日)のシーズンを迎えた。その春節を祝うのに欠かせないのが、紙に縁起の良い対句を書いて家の入り口に貼る「春聯(しゅんれん)」だ。厳格な新型コロナウイルス対策が緩和され、今年は久しぶりに通常に近い形で春節を祝えるようになった。中国各地では書道愛好家らのボランティアが、希望者に春聯を贈っている。

 中国では旧暦の12月23日を「小年」と呼び、小年から本格的な正月休暇モードに入る。今年の小年は1月14日で、各地で春聯を書いて贈る活動が行われた。

 中国北西部の山西省(Shanxi)運城市(Yuncheng)新絳県(Xinjiang)の広場では、書道愛好家らが筆を走らせ、「オーダーメード」の春聯を次々と仕上げていた。84歳の周長勝(Zhou Changsheng)さんは50年以上、春聯を書き続ける長老格だ。最近は印刷された春聯を購入するのが一般的になったが、「手製の方がやはり風情があっていいでしょう」と周さん。春聯を受け取った市民らは笑顔で自宅へ向かった。

 北京市では、北京駅の利用客向けに手作り春聯を贈るイベント「送福到家(福を家に届ける)」が行われた。北京書法家協会所属の書道家たちが新年を祝い、家族の幸福を願う対句を書いていた。受け取った市民は喜んで長距離列車に乗り込み、故郷へと向かっていった。

 中国南部の広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)柳州市(Liuzhou)柳城県(Liucheng)は古くから著名な書道家が活動し、「広西書道の郷」と呼ばれている。広場では大人も子どもも集まって春聯を書くイベントが行われ、春節ムードを盛り上げた。漢字のルーツの甲骨文字が見つかったことで知られる河南省(Henan)安陽市(Anyang)殷都区(Yandu)では、古代の甲骨文字を使って「福」などの文字を書く催しが行われた。

 中国では公式の春節連休は1週間(今年は1月21~27日)だが、学生や出稼ぎ労働者をはじめ、より長期の休みを取る人が多い。故郷に帰って家族だんらんを過ごし、親戚や友人宅を訪れ、毎日のように飲食を楽しむのが昔ながらの風習だ。しかしコロナ禍が始まって以降、国民大移動による感染拡大を防ぐため「就地過年(その場で年越し)」が奨励された。また、感染者が多い地域は自宅からの外出が制限され、町ぐるみで春節を祝うことができない地域が多かった。

 コロナ対策が緩和された今年、多くの市民はようやく本来の形で春節を祝えるようになった。自宅の入り口に貼る春聯は、日常を取り戻した象徴のように映っている。(c)東方新報/AFPBB News