【2月6日 AFP】観光客以外には今やほとんど見向きもされない英ロンドンの赤い電話ボックス。だが、スチュアート・フォークス(Stuart Fowkes)さんは、まだ使える公衆電話を見つけて喜びを隠せない様子だ──。

 フォークスさんは、さまざまな「失われつつある音」を保存するプロジェクトを手掛けている。電話機の呼び出し音もそうした音の一つ。

 携帯型録音機器を取り出したフォークスさんはすぐに録音を始めた。「音には昔から興味があった」と語る。

「今はかつてないほどの速いペースで新しい音がどんどん現れている。同時に、かつてないほど速く変わり、消えていっている」

 フォークスさんは、音に関するウェブサイト「シティーアンドメモリーズ(Cities and Memories)」を2015年に立ち上げた。過去5年間で世界100か国から集まった音源は5000を超える。コレクションはロンドンの大英図書館(British Library)にも収蔵されている。

 現在、フォークスさんが取り組んでいるのは「記憶の片隅にある」音を保存するプロジェクトだ。人々が「忘れかけている」音は「心に最も響く」音だとAFPの取材に語った。

「録音された音がいかに人の心を揺さぶるかを見て驚いた。(中略)8ミリフィルムカメラの音を聞いて、1978年に父親が初めてリビングでホームムービーを上映したときのことを思い出したと言う人もいる」

「失われつつある音」のプロジェクトでは、ヘッドホンステレオ「ウォークマン(Walkman)」や古いゲーム機、蒸気機関車やビンテージ・スポーツカーの音など、150あまりの音源がフィーチャ―されている。氷河の崩壊音といった自然環境の急速な変化を想起させる音の他、ミュージシャンやアーティストがリミックスした音も含まれている。

「産業革命以前は、われわれの周りの音は数百年間、あまり変わっていなかっただろう。鐘や馬のひづめ、手工業の音などだ」とフォークスさんは語る。

「現在の変化のペースはおかしい。携帯電話の着信音のようにほんの数年前の音が、時代遅れに聞こえてしまう」 (c)AFP/Helen Rowe and Eric Randolph