【1月20日 Xinhua News】地球と火星が太陽を挟んでほぼ一直線に並ぶと、火星からの通信電波は太陽の電磁波の干渉(太陽雑音妨害)を受ける。中国の火星探査機「天問1号(Tianwen-1)」は2021年の9月下旬から10月中旬にかけ、初めてこの現象を経験した。地球との通信が不安定になり、時には途切れ、1カ月にわたり「圏外」となった。

 太陽雑音妨害の期間中、天問1号周回機と欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス・オービター」のミッションチームは、二つの探査機を通じて地球に無線信号を定期的に送信。多くの国の科学者が計十数台の電波望遠鏡を使い、信号が太陽の影響を受ける状況を観測し、大量のデータを取得した。

 中国科学院の上海天文台と国家天文台、国家空間科学センターや北京大学地球・空間科学学院、オーストラリアのタスマニア大学、欧州VLBI(超長基線電波干渉法)合同研究所など国内外の研究機関は、取得されたデータの詳細分析を通じて太陽雑音妨害の研究を共同で実施。このほど重要な成果を上げ、関連する研究論文が天文学・天体物理学の学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に掲載された。

 論文の責任著者、上海天文台の馬茂莉(Ma Maoli)研究員によると、研究者は、21年10月9日に火星投影点(火星の太陽付近での投影)が太陽中心から2・6Rs(太陽半径)離れた時点で二つの探査機が送信した無線信号を受信した6カ所の観測所のデータに、最大でプラスマイナス20ヘルツの干渉が10分間にわたり発生していたことを発見した。

 干渉信号の分析の結果、無線信号が太陽近傍領域を通過する際、同領域の全電子含有量(TEC)に千TECU(全電子数単位、1TECU=1平方メートル当たり10の16乗個)以上の変化があったことが判明した。

 広視野分光コロナグラフ(LASCO)で同一期間に得られた光学リモートセンシング観測データと比較した結果、今回のTECの変化は、磁場を帯びた大量のプラズマを急速に放出する、太陽で最も激しい爆発現象の一つ「コロナ質量放出(CME)現象」によって引き起こされたことが明らかになった。

 火星投影点付近のより小規模な範囲では、CMEとコロナストリーマ(流線)の相互作用によって発生したコロナストリーマ波も観測された。コロナストリーマ波は大規模なコロナの変動現象で、太陽風プラズマの運動に対する磁場の制約状況を反映している。

 今回の観測では、CMEが消散する際に初期の高速太陽風の流れも観測された。

 専門家は今回の共同研究の成功について、天問1号とマーズ・エクスプレスから送信された信号に対する高感度なリモートセンシング観測手法や、多地点での共同観測が持つ高い時間分解能と空間分解能による優位性が寄与したと指摘。今回の方法を用いれば、その場(In situ)観測をする探査機が入ることのできない太陽近傍領域や、光学的手段では識別できない小規模空間の急速な変化の観測が可能になり、太陽近傍領域の環境と、それが深宇宙通信に与える影響をより詳細に研究する手助けになるとの見方を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News