■消えるシルト

 アスワンダム(Aswan Dam)によってシルトの減少を目の当たりにしてきた農家は、この貴重な自然の肥料が奪われることを危惧している。

 スーダンの農家オマル・アブデルハイさん(35)は、茶色に濁ったナイル川の水を使い、緑豊かな畑でキュウリやナス、ジャガイモを作ってきたが、栽培が年々難しくなっていると感じている。

 8年前、家族所有の土地を耕し始めた頃には、作物に養分を供給する「十分なシルト」があった。しかし、ダム建設の進展につれ、少しずつ「水の透明度が上がっていった。(洪水で)水位が上昇しても、シルトは流れてこなくなった」と話す。

 スーダンでは政情不安や経済の低迷、軍政に対する抗議行動が続いており、水資源管理にまで手が回っていない。

■忍び寄る飢餓

 スーダンは毎年、豪雨に見舞われる。昨夏も150人が死亡した上、村々が押し流された。ただ洪水が起きても、雨水をためたり、再利用したりするシステムが存在せず、農業には役立てられていない。

 同国は長年、ピーナツや綿花などの主要輸出国だったが、今や人口の3分の1が飢餓に直面する恐れが出ている。

 植民地時代に建設された小規模なかんがい用水路の少ない流量でも、肥沃(ひよく)な土地を潤すには十分だが、こうしたシステムの整備は遅れている。

 オマル・ハッサン・アハメド・バシル(Omar Hassan Ahmed al-Bashir)大統領の統制経済の下、広大な農地が耕作されたが、バシル政権は2019年に崩壊。休耕状態の農地では今、住民がトウガラシやキュウリをほそぼそと栽培している。

 米ノートルダム大学(University of Norte Dame)がまとめている、気候変動への適応力を示すND-GAIN番付によれば、スーダンを含めたナイル川流域諸国は最下位付近にとどまっている。

 ウガンダの水資源・環境省関係者は、気温上昇は国民を養うための農業生産だけでなく、家庭や産業界に電気を供給するための発電にも影響を及ぼすと指摘。「短時間に降る豪雨は洪水を引き起こす。乾期が長引けば水が失われる。いずれにしても人は水なしでは生きていけない」と訴えた。(c)AFP/Menna ZAKI in Sudan, Grace MITSIKO in Uganda and Bassem ABOUALABBAS and Sarah BENHAIDA in Egypt