【1月20日 AFP】ビーチは攻撃の標的になり、ホテルは閉鎖されたまま。ウクライナはロシアによる侵攻を受け、重要な収入源だった「観光」を奪われた。それでも、観光業の復活こそが戦後復興の「鍵」を握るとみられている。

 ウクライナ観光開発庁のトップ、マリアナ・オレシキウ(Mariana Oleskiv)氏はAFPの取材に応じ、「戦争が終われば、観光がウクライナの早期復興と経済再興で重要な役割を果たすだろう」と語った。

 同氏はスペイン・マドリードで22日まで開催の世界最大規模の国際旅行見本市FITURで、ウクライナ代表団を率いている。

 終わりはまだ見えない。しかし、政府はすでに観光促進計画の策定に着手しているという。「もちろん、今すぐ観光客に来てもらいたいわけではない」とオレシキウ氏は話す。「安全を取り戻した暁には、受け入れ態勢が整っているよう準備をしたい」

 国連世界観光機関(UNWTO)の統計によると、ウクライナへの外国人観光客数は、2010年まではロシアや東欧からの訪問者を中心に年間2000万人近くに上り、欧州で8番目に多かった。

 だが、2014年に主要な観光地クリミア(Crimea)半島がロシアに併合されると、観光客数は約1200万人にまで落ち込んだ。

 ロシアが昨年2月24日に侵攻を開始して以降は、観光業は壊滅状態となった。

 侵攻開始前、観光部門はウクライナ経済の2%を占めていた。観光業を再び盛り上げるのは容易ではなく、大規模投資が必要となる。

 オレシキウ氏は「時間が必要だ」と認める。ただ、黒海(Black Sea)のビーチや史跡、家族で楽しめるスキーリゾートなど、ウクライナは潜在的な観光資源に恵まれていると強調する。

 侵攻がもたらすストレスや破壊、ロシアの攻撃の影響で発生した停電から逃れようと、カルパチア(Carpathia)山脈には今なお国内旅行者が訪れているという。

 しかし、国内の鉄道網はボロボロになり、歴史的・文化的建造物は破壊されている。そのため、戦争と関連付けられるイメージとどう向き合っていくか、という課題に直面することになる。

 オレシキウ氏は、「戦争の爪痕、それにロシアによる戦争犯罪の跡を見てもらうことが重要だ」と話す。

 しかし、紛争が終わった後には、ウクライナの別のイメージを売り出していく時が来ると強調。「それは勇敢に闘い続けるウクライナ人、というイメージだ」と語った。 (c)AFP/Valentin BONTEMPS