【1月19日 東方新報】中国ではこの数年、「無糖」ブームが続いている。

 新興飲料メーカーの元気森林(Yuanqisenlin)は「糖分ゼロ、カロリーゼロ、脂肪分ゼロ」をうたった炭酸水を2018年に発売し、爆発的人気を得た。サントリー(Suntory)の無糖黒烏龍茶(中国ではペットボトルのお茶は砂糖入りも多い)や、中国ミネラルウオーター最大手「農夫山泉(Nongfu Spring)」の無糖茶「東方樹葉」シリーズも大ヒット商品となった。コーラやコーヒーも無糖・微糖の商品が増えている。

 民間団体の科信食品・健康情報交流センターの調査によると、無糖炭酸飲料を買ったことがある消費者は全体の85%に上り、無糖コーヒーは66%、無糖のチューインガムも59%と半数を超えている。

 ただ、消費者の80%は、砂糖の主成分であるショ糖が「ゼロ」という表示が商品にあれば、すなわち無糖だと漠然と判断。無糖飲料について誤解している恐れがあるという。中国疾病センター栄養・健康所の丁鋼(Ding Gang)所長は「ショ糖以外にもグルコースシロップ(液状ブドウ糖)や結晶果糖、濃縮果汁、ハチミツ、ジャムなどが成分に含まれているか確認する必要がある」と指摘する。

 中国では近年、健康ブームがわき起こり、それに伴い無糖飲料の売れ行きが急増している。健康を気にする人が増えたのは、それだけ「不健康」な人が増えた裏返しと言える。急激な経済成長により市民の収入が増えて食生活が豊かになった分、肥満や生活習慣病に悩む割合が増加。女性を中心にダイエット志向が強まっていることや、「95後(1990年代後半生まれ)」「00後(2000年代生まれ)」の若者の33%が薄毛に悩んでいることも、健康意識の高まりに影響している。

 特に子どもの肥満は社会問題となっている。2021年のリポートでは、6歳以下の乳幼児の肥満率が10.4%、6〜17歳の肥満率が19.0%に達している。「小胖墩(ポッチャリちゃん)」が増える要因として、運動不足に加えて加糖飲料の多量摂取があり、将来的に糖尿病を引き起こす危険因子になっているという。

 こうした背景から無糖飲料への関心が高まっているが、「にわかブーム」に警鐘を鳴らす識者も多い。無糖飲料には人工甘味料のアスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、天然甘味料のエリスリトール、ステビオシドなどが使用されている。北京大学(Peking University)公共衛生学院の馬冠生(Ma Guansheng)教授は「代替甘味料の安全性は保証されていると言っても、長期的に大量に摂取しても良いという意味ではない。あくまで適度な摂取が必要」と指摘。さらに「無糖飲料を飲んでいる分、食べ物は自由に食べていいと考えれば、肥満リスクが高まるだけ。最も重要なことは、健康的な食生活とライフスタイルを身につけることです」と呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News