■戦死した教え子も

 ウクライナ兵はほぼ全員、学校で英語を習っているが、特に一昔前の英語教育は必ずしも実用的なものではなかった。

 キーウでのチェクリジョワさんの教え子の一人、イーホル・ソルダテンコさん(50)は「ソビエト時代だったから、学校で習った英語は基本的に役に立たない。今思えば、制度全体が不十分で、文章を理解もせずにただ暗記していた。実生活で使えるような代物ではなかった」と話した。

 チェクリジョワさんはドネツク州の基地で教えていた時、戦友を失った兵士たちと悲しみを共有した。ロシア軍の執拗(しつよう)な攻撃を受けている自身の故郷バフムート(Bakhmut)で命を落とした兵士の中には、教え子もいた。

「二重の痛みとなりました。バフムートはわが故郷であると同時に、教え子たちの墓場にもなってしまった」

 最近キーウで行われた1時間の英会話レッスンに参加した兵士たちは、失った戦友のことを話す時だけは、ウクライナ語になった。

 ユーリー・カルムツキーさん(36)はそれでも涙をこらえ、たどたどしくはあっても、英語で自分の思いを伝えようとした。

「私はたくさんの友人を失う……。親しい仲間だった。私は失う……彼らを。私は彼らを失う。とてもつらい」