【12月27日 AFP】サッカー元イラン代表のレジェンドで、反政府デモを支持しているアリ・ダエイ(Ali Daei)氏(53)は26日、首都テヘランからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)に向かっていた航空機のルートが変更され、搭乗していた自身の家族が到着先で降機を命じられたと明らかにした。

 クルド系イラン人女性マフサ・アミニ(Mahsa Amini)さん(22)が、女性に課されている厳格な服装規定に違反した疑いで逮捕された3日後の9月16日に死亡して以降、イランでは抗議デモが起きており、政府はこれを「暴動」と呼んでいる。

 イラン学生通信(ISNA)はダエイ氏の話として、同氏の妻と娘がマハン航空(Mahan Air)でイマーム・ホメイニ国際空港(Imam Khomeini International Airport)から飛び立ち、ドバイへ向かっていたと伝えた。

 しかし、国営イラン通信(IRNA)によると、航空機はルートを変更してイランのキシュ島(Kish Island)に着陸させられ、そこで同氏の家族が降ろされたという。一方、司法当局の情報として、同氏の妻が「イラン革命の反対派や暴徒と関わり、ストライキを呼び掛けた」ことを受け、「出国する際には関係機関に届け出ることを誓約していた」とも伝えた。

 アミニさんの死がきっかけとなった抗議デモを支持して以降、脅迫の標的にされていると明かしているダエイ氏は、ISNAに対して、「娘と妻は機内から降ろされたが、逮捕はされていない」と述べ、「(出国を)禁止されていたなら、出国審査のシステムで分かるはずだ。この件については誰も答えてくれず、こうなった理由が全く分からない」と主張した。

 また、現在は家族がテヘランに戻れるよう手を尽くしているといい、「彼らはテロリストを逮捕したかったのだろうか? 妻と娘はドバイへ行って、数日間で戻ってくる予定だった」とも付け加えた。

 ダエイ氏は9月27日にソーシャルメディアで政府に対し、「弾圧や暴力、そして逮捕を用いるのではなく、イラン国民の問題を解決すること」を呼び掛けた。10月にはAFPの取材で、海外から帰国した際にパスポート(旅券)を警察に一時没収され、数日後に返還されたと明かしていた。

 イランで最も有名なサッカー選手であるダエイ氏は現役時代、1998年W杯フランス大会(1998 World Cup)の米国戦で母国に2-1の勝利をもたらすなど、代表通算109得点をマーク。この数字は、2021年9月にポルトガル代表クリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)に抜かれるまで歴代最多記録となっていた。クラブレベルでは、ドイツ・ブンデスリーガ1部のバイエルン・ミュンヘン(Bayern Munich)などでプレーした。(c)AFP