【12月26日 東方新報】日本のドイツ、スペイン撃破やモロッコの快進撃など数々の番狂わせを生んだサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会(2022 World Cup)だったが、中国では「ライーブの王子さま」と呼ばれたカタール人少年に大きな注目が集まった。

 主催国カタールの初戦はホームならでは熱狂に包まれたものの、代表チームはエクアドルに0対2で惜敗。会場の様子を伝える中継映像に、カタールの王族のように民族衣装の白い頭巾をかぶった少年が、「信じられない」というように目をまん丸にして、頭巾を抑えて落胆する様子が映った。

 中国のサッカーファンの中では、この表情豊かなカタールの少年が、白い頭巾をモチーフにしたような大会マスコット「ライーブ(La'eeb)」のようだと話題になり、本戦に負けないくらい注目された。

 もともと中国では、白くてヒラヒラしたライーブは、中華料理の定番のギョーザやワンタンの皮に似ていると親しみをもたれ、かわいいと好評だった。そこにきて、まるで実写版ライーブのような少年の出現に、少年をモデルにしたイラストやスタンプも登場、「ライーブの王子さま」「ワンタン王子さま」などと話題になった。

 海外ではティックトック(TikTok)として知られる中国のSNS「抖音(Douyin)」が11月下旬に少年のアカウントを開くと、フォロワー数は20時間で1000万人を突破、1週間で1500万人を超えたという。これだけで、300万人に満たないカタールの人口の5倍以上のフォロワーを抱えたことになる。

 さらに中国のSNS「小紅書(Red)」と「微博(ウェイボー、Weibo)」でも、フォロワーは合わせて100万人を超えた。

 少年は、今大会を記念して中国から贈られたパンダを動物園に見に行く様子や、ギョーザ作りに挑戦する映像を投稿。簡単な中国語も披露し、中国人の心をわしづかみにした。400万近い「いいね」がついた投稿もある。中国での人気が逆輸入され、カタールのスポーツ専門チャンネルにも出演した。

 少年は中国では「王子さま」とあだ名がつけられたが、実は本当の王子ではなく、16歳の高校3年生。王子ではないものの、王族の一員だという。サッカーの大ファンで、一番好きな選手は、ポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)選手だそうだ。

「まさか1000万人ものファンがつくなんて、今まで考えてもみたこともありませんでした」

 少年は中国メディアの取材に対し、そう話している。

 カタール代表チームは1次リーグで敗退してしまい、残念ながら存在感を示せなかったが、ライーブの王子さまは思いがけずその後も孤軍奮闘する結果となり、母国の宣伝に貢献したというわけだ。(c)東方新報/AFPBB News