【12月23日 AFP】スペイン下院は22日、16歳以上の人が身分証明書の性別を自己申告のみで変更できるようにするトランスジェンダーの権利保障法案を可決した。

 同国では現在、性別変更の要件として、成人に対しては性別違和の診断とホルモン療法を2年以上受けていることの証明が義務付けられ、未成年の場合は司法当局の許可が必要とされている。

 法案はそうした要件を撤廃するもので、16歳以上であれば自己申告のみで身分証の性別変更が可能になる。また、未成年でも特定の要件を満たせば、最年少で12歳から性別変更が可能になる。

 法案はさらに、個人の性的指向を変えることを目的とした「転向療法」を禁止。職場でのLGBTなど性的少数者に対する差別の撤廃を推進し、特に弱い立場にあるトランスジェンダー女性の社会統合を促す内容となっている。

 下院は、同法案を賛成188、反対150、棄権7で可決。法案は今後上院も通過し、数週間以内に新法として成立する見通しだ。法律上の性別を自己申告のみで変更できる国は世界でも少なく、欧州諸国では2014年にデンマークが初めて自由な性別変更の権利を認める国となった。

 同法案は昨年6月に閣議決定されたが、穏健左派の社会労働党と急進左派ポデモスからなる連立政権はその内容をめぐり分裂。ポデモスが法案を推進する一方で、社会労働党は内容の修正を試みてきた。

 主要フェミニスト団体などの反対派は、制度の悪用や女性の権利後退につながるとして、法案に反対。女性を自称する男性が女子スポーツに参加したり、女性刑務所に移送されたりすることが可能になると主張している。(c)AFP