【12月23日 東方新報】空前のキャンプブームが起きている中国で、文化観光省などの行政機関が合同で11月下旬、「キャンプ業界の健全で秩序ある発展を推進する指導意見」を発表した。その内容を見ると、キャンプブームの現状と課題が浮かび上がる。

 中国では新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、都会の「密」を避けてキャンプを楽しむ人が急増した。

 旅行情報メディア「馬蜂窩(Mafengwo)」によると、キャンプ愛好家の74%が大都市に住んでいる。「1線都市」と呼ばれる上海市、北京市、広州市(Guangzhou)、深セン市(Shenzhen)の4市および「新1線都市」と呼ばれる成都市(Chengdu)、杭州市(Hangzhou)、武漢市(Wuhan)、天津市(Tianjin)、青島市(Qingdao)などが挙げられる。世代別で見ると、1990年代から2000年代生まれの若者層や、1980年代生まれの大人が家族でキャンプをするケースが目立つ。

 まきを集めて火をおこして自炊するといった素朴なキャンプより、キャンピングカーなど用具一式をばっちり買い込んで「プチぜいたく」を楽しんだり、逆にキャンプ用品からログハウス、シャワーまですべて用意されたキャンプ場で「手ぶらキャンプ」を楽しんだりするスタイルが多い。2014年は77億元(約1509億円)程度だったキャンプ市場が2022年は350億元(約6861億円)を超えると予想されている。

 そんな中、発表された「指導意見」では、「各地方で公共キャンプ場の建設や民間キャンプ場への支援、郊外の公園にキャンプエリアを設ける」ことを奨励している。最近は爆発的なキャンプブームにより、都市近郊の公園では週末になるとテントとテントのすき間がないほど「密」な状況が生まれている。また、キャンプをする人びとが周囲の森林や芝生を傷つけたりごみを放置したりする問題も起きている。このため、野外のキャンプを正常に楽しめる環境整備が必要となっている。

 指導意見では「キャンプ場の飲食などのサービスを向上させ、レジャーの品質を引き上げる」ことも要請。キャンプ場の運営には年間100万元(約1960万円)程度が必要とされるが、コストを削減するため設備の乏しいまま開業するキャンプ場も目立ってきていることが背景にある。

 また、「キャンプ場に音楽祭や芸術祭、スポーツイベントなどを取り入れてサービスを充実させる」ことも指導意見で触れられている。2021年以降、中国ではキャンプ関連企業が2万5000社も誕生しているが、各地のキャンプ場は「キャンプ+バーベキュー」というサービスのワンパターン化も話題となっている。移動の際に陰性証明書の提示などが必要な「ゼロコロナ政策」が見直され、各地の旅行が自由な状況に戻れば、キャンプブームは一気に冷え込む恐れがある。政府としても、新たな消費振興ジャンルとなったキャンプ業界を引き続き成長させたい思惑があり、一過性に終わらないよう腐心しているようだ。(c)東方新報/AFPBB News