【12月20日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領(44)は、サッカーW杯カタール大会(2022 World Cup)決勝でVIPボックスの座席から飛び上がったり、ピッチ上で敗戦に打ちのめされている母国の選手たちを慰めたりするなど、さまざまなパフォーマンスを繰り広げたが、それは万人の共感を得られるものではなかった。

 ルサイル・スタジアム(Lusail Stadium)で行われた18日の決勝で、マクロン氏は思わず視界に入ってしまうほどの存在感を放ち、試合後にはチームの控室にも登場して大いに熱弁を振るった。

 自身のSNSに投稿した動画では、時には効果を狙って拳をもう片方の手のひらに打ちつけながら「君たちは素晴らしいチームだ」と選手たちを鼓舞。「2大会連続で決勝の舞台に立ち、再び優勝に手が届くところまできたチームは他にいない」と続け、「君たちには、ここに来るためのハート、ハングリーさ、欲望、そして才能があった。だから、ここへ来てありがとうと言いたかった」と語りかけていた。

 試合終了後にピッチへ足を踏み入れると、カメラの前でFWキリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)をつかまえ、その頭を胸に抱きしめていた。記録的な視聴者数に上った国内テレビの中継映像では、国家元首の存在にほとんど気づかぬままぼう然と前を見つめて悲嘆に暮れる選手たちに、喜々として話しかけていた姿も映っていた。

 そのときの様子について、マクロン大統領は民放ラジオ・モンテカルロ(RMC)のインタビューで、20日に24歳になるエムバペに対して「『君はまだ24歳じゃないか』と言ったんだ」と明かし、「彼と同じくらい、私も悲しかった」と述べた。

 仏極右政党「国民運動連合(UMP)」の議員は国内のニュース専門局LCIに対し、「大統領が接着剤のようにエムバペにつきまとっている姿は、少しばかりうっとうしかった」とコメント。急進左派政党「France Unbowed」の次期党首もツイッター(Twitter)で、マクロン大統領が先月11日に人権問題が指摘されているカタールでのW杯開催について聞かれた際に話していたフレーズを使い、「スポーツを政治化してはならない」と皮肉った。

 一方、国内ニュースチャンネルのBFMテレビは「マクロン大統領はやりすぎたか?」と問いかけ、決勝当日は一晩中「12人目」のフランス代表メンバーのように振る舞っていたと付け加えた。

 サッカー専門サイトのSoFoot.comでは「マクロン氏、全面的にオフサイド」との見出しで「大統領は現場の人間ではない」との論評が書かれおり、「悲劇であろうと輝かしい場面であろうと、選手やスタッフだけのものであるはずの瞬間に、彼の役割や地位がこのように見られることがあってはならない」と記されていた。(c)AFP/Adam PLOWRIGHT