【12月11日 AFP】ベルギー警察は9日夜、サッカーW杯開催国カタールをめぐる汚職事件の捜査で、欧州議会(European Parliament)のエバ・カイリ(Eva Kaili)副議長(44、ギリシャ出身)を逮捕した。捜査関係筋がAFPに明らかにした。

 ロベルタ・メツォラ(Roberta Metsola)欧州議会議長は10日、カイリ氏の職務権限を停止し、捜査に全面協力すると表明した。この汚職疑惑をめぐってはカイリ氏の他にも元欧州議員ら4人が逮捕されており、欧州議会の「抜本的な改革」を求める声も上がっている。

 捜査当局は9日、ブリュッセル市内16か所を家宅捜索し、現金60万ユーロ(約8600万円)と複数のパソコン、携帯電話を押収した。ベルギー連邦検察庁によると、捜査は「あるペルシャ湾岸の国」が絡んだ「汚職」と「マネーロンダリング(資金洗浄)」をめぐるもの。捜査に詳しい司法関係者はAFPに対し、「湾岸の国」はカタールだと認めた。

 情報筋によれば、他の4人の逮捕者のうち少なくとも3人はイタリア国籍かイタリア出身。カイリ氏のパートナーで、欧州議会会派の欧州社会民主進歩同盟(S&D)の議員補佐官を務めるフランチェスコ・ジョルジ(Francesco Giorgi)氏や、2004~19年に欧州議員を務めたピエルアントニオ・パンツェリ(Pier-Antonio Panzeri)氏が含まれている。

 元テレビ司会者のカイリ氏は、欧州議会の14人いる副議長の一人。W杯カタール大会(2022 World Cup)開幕直前の11月、カタールのアリ・ビン・サイード・ビン・サミーフ・マッリ(Ali bin Saeed bin Smaikh al-Marri)労相と会談し、「アラブ人にとってW杯は政治改革のための素晴らしいツールになった」(国営カタール通信〈Qatar News Agency〉)と述べていた。

 また、欧州議会での演説でも、カタールを「労働者の権利におけるフロントランナー」などと称賛していた。

 全ギリシャ社会主義運動(PASOK)は、カイリ氏を党から除名したと発表した。

 カタール政府当局者は、AFPに「捜査の詳細については把握していない。カタールが国として不正行為に関与したとの主張はすべて重大な誤情報だ」とし、疑惑を否定した。(c)AFP/Matthieu DEMEESTERE