【12月8日 AFP】アルバニアの首都ティラナのレストランのおりの中で20年以上にわたり飼育されていたヒグマの「マーク」が、オーストリアの保護区に引っ越すことになった。

 マークはこれまで、きょうだいのリザと共にレストラン「クマのテーブル(Sofra e Ariut)」の客寄せのクマとして生きてきた。リザは2年前に死んだ。

 動物福祉団体「フォー・ポーズ(Four Paws)」は7日、マークに麻酔をかけ、オーストリア北部アルベスバッハ(Arbesbach)の保護施設へ移送を開始した。

 所有者によると、約20年前に母グマが射殺され、子グマのマークとリザがレストランに連れて来られた。

 アルバニアのフォー・ポーズのコーディネーターによると、レストランで2頭は約100平方メートルのコンクリート敷のおりの中で飼育され、劣悪な環境に置かれ、不適切な餌を与えられていた。

 おりは屋外にあるため、常に暑さや風雨にさらされ、冬眠は許されなかった。

 マークは体重250キロで、太り過ぎのため歩行に支障が出ている。退屈とストレスにより、不安障害を発症し、少しの音でも攻撃的になったり、うなったりするようになった。

 そしてリザが2020年に死ぬと、状態は悪化した。

 マークを20年間世話してきた飼育員は、「2、3か月間鳴き続けた」とAFPに話した。

 さらに所有者は2頭が子どもをつくるのを止めなかった。だが、ストレスを抱えた2頭は子どもをかみ、1頭も生き残らなかったという。

 フォー・ポーズはこうした虐待行為を受け、マークの命を救うため、緊急対応が必要になったとしている。

 同団体の専門家らによると、20年間にわたり、おりの中で不適切な食事を続けた結果、マークは関節や筋肉、目、重要な臓器に疾患がある。

 保護区に移された後は、マークが「早く回復し、クマらしい生活を楽しめるように」獣医師による治療を受け、適切な餌が与えられるという。

 フォー・ポーズによると、マークは、アルバニア最後の「レストラン・グマ」だったという。だが、アルバニアではマークのようなケースは珍しくない。

 同団体はこれまでに、マークを含め34匹の野生動物をアルバニアから国外に避難させてきた。

 別のコーディネーターは「増え続ける国内の野生動物の密売対策を速やかに講じる必要がある」と訴えた。

 同国では、密売され、個人所有者の不適切な飼育下に置かれている大型のネコ科の動物も多い。

 アルバニア当局は、没収した動物のための保護区の開設を検討しているという。(c)AFP/Briseida MEMA