【12月18日 AFP】映画やテレビドラマには、観客や視聴者の政治意識を変えてしまうほどの多大な影響力がある。だが、気候変動をめぐる議論に活用された例はまだ少ない。

 南カリフォルニア大学(USC)の研究チームが、2016~2020年に制作された映画やテレビドラマの脚本3万7453本のデータベースを分析したところ、気候に関するキーワードが含まれていたのは2.8%(1046本)で、特に「気候変動」に言及していたのはわずか0.68%だった。

 気候変動を脚本に取り入れるよう働き掛けているコンサルタント会社、グッドエナジー(Good Energy)の創設者アナ・ジェーン・ジョイナー(Anna Jane Joyner)氏は、脚本家には意欲はあるものの、関心の低さや、偽善者とのレッテルを貼られることへの懸念があると言う。

「多くの脚本家は自分自身のライフスタイルに罪悪感を抱いています。そのため、気候問題に対処している完璧な人間でない限り、この問題について脚本を書く資格はないと考えるのです」

■「パラソーシャル関係」がきっかけに

 USCのエリカ・ローゼンタール(Erica Rosenthal)氏は、画面に登場する人物との「パラソーシャル関係」(面識のない著名人に対する一方的な親近感)を通して、視聴者にどれだけ新しい概念や人物が浸透するかを研究している。

「気候変動についても、自分が好きな番組の中で少し触れられているだけで、人はそれを当然の懸念だと無意識のうちに認識するようになります」とジョイナー氏は言う。「主体的に行動するようになるには、そうしたつながりの感覚が必要なのです」

 ただし、表現方法によって効果には差があると同氏は指摘する。よく見掛けるのは二つの手法だ。まず、この世の終わり的な描き方だが、これは見る側のモチベーションを下げてしまう。そして、登場人物が何かを非難する表現については、「小言が好きな人はいないでしょう」と同氏は話した。

 効果があるのはむしろ、登場人物が気候変動を心配する、あるいは公共交通機関を利用する、生ごみを最小限に抑えるといったシンプルな行動で表現する手法だ。

 ローゼンタール氏は「異常気象をテーマにした作品は多いですが、それが気候変動(への関心)に結び付くことはほとんどありません」と付け加えた。