【12月3日 AFP】英王室で新たに浮上した人種差別問題は、最悪のタイミングで訪れた。昨年に王室内の人種差別を告発したばかりのヘンリー王子(Prince Harry)は間もなく、ドキュメンタリー番組や新著を通じて王室の内幕を暴露する予定だ。

 今回の問題は、先月29日にバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)で開かれたレセプションで起きた。王族の側近を長く務めてきたスーザン・ハッシー(Susan Hussey)氏(83)が、英国生まれの英国人である黒人女性のヌゴジ・フラニ(Ngozi Fulani)氏に対し、「本当はどこから来たのか」と繰り返し尋ね、同氏が英国人だということを受け入れようとしなかった。

 ヘンリー王子の兄で王位継承者のウィリアム皇太子(Prince William)と妻のキャサリン妃(Catherine, Princess of Wales)が米国訪問を開始する中、フラニ氏はこのやり取りをツイッター(Twitter)に投稿。チャールズ国王(King Charles III)は直ちにハッシー氏を王室から追放し、ウィリアム皇太子も、自身の代母(洗礼式の証人)であった同夫人との決別を強いられた。

 フラニ氏は1日、英BBCのインタビューで、ハッシー氏の発言は「私に自分の英国籍を否定させようとする試み」だったと批判。SNSなどでは、多くの有色人種の英国人が、同様の差別的発言を受けた体験を共有した。

 今回の騒動は、チャールズ国王が9月に死去した母エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の後を継いで以降に起きたものとしては最も深刻なものだ。ハッシー氏は単なる側近の一人ではなく、60年にわたりエリザベス女王の侍女を務めた人物だった。

 だが、チャールズ国王とウィリアム皇太子は即座に騒動の収束に動き、一部の黒人コメンテーターから称賛された。

 王室は特に、昨年のヘンリー王子夫妻による告発から教訓を得たようだ。黒人の母を持つメーガン妃(Meghan, Duchess of Sussex)と王子は、同妃が妊娠中だった赤ちゃんについて、ある王族から人種差別的な発言があったと暴露した。

 これに対し、ウィリアム皇太子は「私たちは人種差別主義の一家では決してない」と反論。一方で王室は、この問題に「内々に」対処するとした。王室はその後、職員の人種構成に関するデータの公表も開始。王室には多様性の面で改善すべき点があることを認めた。

 ウィリアム皇太子夫妻は現在、ボストンを訪問中で、米カリフォルニア州に住むヘンリー王子夫妻も来週ニューヨークを訪問予定。いずれも米東海岸を訪れるものの、王子兄弟が面会する予定はない。

 ヘンリー王子夫妻に対しては、王室から離脱した後、自身の立場を利用して金稼ぎをしているとの批判が上がっている。米動画配信大手ネットフリックス(Netflix)は夫妻のドキュメンタリー番組を間もなく配信する予定。来月には、王子の自伝「スペア(Spare)」の発売も控えている。

 メーガン妃が王室入りした際、ハッシー氏は王室儀礼の教育担当に任命されたが、ある伝記作家によると、メーガン妃はこの申し出を拒否したという。同夫人はウィリアム皇太子とヘンリー王子の母ダイアナ元皇太子妃(Princess Diana)に対しても同じ教育役を務めていた。

 NGO「人種平等委員会(Commission for Racial Equality)」の元代表で評論家のトレバー・フィリップス(Trevor Phillips)氏は英紙タイムズ(Times)への寄稿で、「カリフォルニアからは、メーガン妃が『だから言ったでしょ』と高笑いするのをこらえている音が聞こえてくる」と書いた。(c)AFP/Jitendra JOSHI