【12月1日 AFP】英王族の側近を長く務めてきた貴族女性が11月30日、黒人の英国人女性に対して「本当」の出身地はどこかと繰り返し尋ねたことを謝罪し、王室での役職を辞任した。

 この貴族女性は、スーザン・ハッシー(Susan Hussey)氏(83)。長年にわたり故エリザベス女王(Queen Elizabeth II)の侍女を務めた後、カミラ王妃(Queen Consort Camilla)の廷臣となっていた。エリザベス女王の孫ウィリアム皇太子(Prince William)の代父母(洗礼式の証人)の一人でもある。

 問題となったのは、英慈善団体「シスター・スペース(Sistah Space)」の最高経営責任者(CEO)でドメスティック・バイオレンス(DV)被害者の支援活動で知られるヌゴジ・フラニ(Ngozi Fulani)氏とのやり取りだった。

 フラニ氏がツイッター(Twitter)への投稿で明らかにしたところによると、29日にバッキンガム宮殿(Buckingham Palace)で開かれたレセプションに出席した同氏は、「レディーSH」から出身地を聞かれ、自分は英国で生まれ育った英国人だと説明したが、それでも「本当はどこから来たのか。あなたの人々はどこから来たのか」と尋ねられた。改めて自身は英国籍であると伝えたが、さらに同様の質問が続き、最終的には「カリブ海系のアフリカ人の子孫」と答えたという。

 英メディア各社は王室筋の話として、発言の主はハッシー氏だったと伝えている。レセプションは、女性に対する暴力の問題に対する意識向上のためカミラ王妃(Queen Consort Camilla)が主催。フラニ氏はハッシー氏とのやりとりにより、この催しについて「複雑な気持ち」を抱いたと述べている。

 王室は声明で、この問題を「極めて深刻に」受け止めており、レセプションでの発言は「受け入れられず、深く遺憾」だと表明。問題の人物が謝罪するとともに王室での役職を即時辞任したことを明らかにし、「王室の全メンバーが、常に順守しなければならない多様性と包括性の方針について注意喚起されている」と説明した。

 英王室をめぐっては昨年、チャールズ国王(King Charles III)の次男ヘンリー王子(Prince Harry)と黒人の母を持つ妻メーガン妃(Meghan, Duchess of Sussex)が、王室内の人種差別を告発。以来、王室は多様性の改善に取り組んでいる。(c)AFP