遺体安置所を圧迫する暴力事件 行方不明者も急増 メキシコ
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【1月22日 AFP】メキシコ南西部ゲレロ(Guerrero)州チルパンシンゴ(Chilpancingo)の遺体安置所は身元不明の遺骨でいっぱいだ。
「死者は増え続け、行方不明者も後を絶ちません」と話す法人類学者のヌビア・マエストロ(Nuvia Maestro)氏(36)は、遺体の年齢を調べるために肋骨(ろっこつ)を加熱し組織を取り除いていた。室内では香がたかれているが、それでも「死のにおい」が漂い、ハエが飛んでいた。
麻薬の密売を取り締まるメキシコ政府とカルテルとの麻薬戦争が激化し、人口10万人当たりの年間殺人件数は2006年の9.6件から昨年は28件と約3倍に増加。行方不明者も同時期に265人から1万366人と急増した。
多くの遺体は、身元不明のまま当局に埋葬されていると思われる。
こうした危機的な状況が生まれている理由について専門家は、資金と人材不足、迅速にDNA検査を行える機関や統合されたDNAデータベースが存在しないことを挙げている。
国連(UN)の強制失踪委員会(Committee on Enforced Disappearances)は、現状のままでは、現地NGOが記録した5万2000体の身元不明遺体の確認作業を終えるのに約120年かかると推計している。
ハリスコ(Jalisco)州の遺体発掘調査コーディネーターを務めるダリア・ミランダ(Dalia Miranda)氏は、遺体の発掘に関わる心理的負担は大きく、セラピーを受けないと身が持たないと語った。「おぞましいものを目の当たりにするので」
グアダラハラ(Guadalajara)の大学研究者アルフォンソ・パルティーダ(Alfonso Partida)氏によると、遺体から採取したDNAサンプルと、行方不明者の親族のDNAサンプルの比較には最長6か月かかる。
政府は身元確認の専門機関2か所と遺体安置所4か所を新設。また、国立の身元確認機関と遺伝学研究所の設立にも取り組んでいる。
一方、法律で定められている国立の法医学データバンク創設については、司法省はまだ対処できていない。(c)AFP/Jennifer Gonzalez Covarrubias