【11月28日 AFP】インド南部でこのほど、政府によるヒンディー語強制に抗議し、85歳の男性が焼身自殺したと、警察が27日、明らかにした。

 インドでは数百の言語や方言が使われている。ヒンディー語は主にインド北部で話されている言語で、2011年の最新の国勢調査によると、その話者は人口の44%に満たない。公的な言語としては英語が主に使われているが、地方政府はその地域の言語を使用している。

 しかし先月、一部の国会議員が、医学や工学などの技術教育も含めヒンディー語を国の公用語にするよう提言したと報じられた。

 ヒンズー至上主義を掲げるナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、英語の使用は「奴隷根性」につながっているとし、インドの言語の使用を推し進めている。

 一方、反対派は、モディ政権がヒンディー語の使用を強制しようとしていると非難しており、特に南部で反発が強い。

 南部の言語の大半はドラビダ語族で、ヒンディー語などのインドヨーロッパ語族とはまったく異なる。

 警察によると、南部タミルナド(Tamil Nadu)州で農業を営むMV・タンガベルさんは、ガソリンと灯油を浴びて自らに火を付けた。

 タンガベルさんは、タミル語で「モディ政権はヒンディー語の強制をやめよ。なぜ、文学的に豊かなタミル語よりヒンディー語を選ばなければならないのか。若者の将来に影響が出る」と書かれたプラカードを持っていた。

 警察は「プラカードは中央政府に向けて書かれたものだ」とAFPに語った。

 タンガベルさんは26日、同州を率いる与党ドラビダ進歩連盟(DMK)のセーラム(Salem)にある事務所前で抗議デモを行った。タンガベルさんはDMKの一員。

 DMKのMK・スターリン(MK Stalin)党首は、このような過激な行動はとらないよう訴えた。

 スターリン氏は「ヒンディー語の強制に対し、政治的・民主的に闘いを続けよう」「多様性のある美しい国を、狭い心で台無しにしてはならない」と呼び掛けた。(c)AFP