【11月23日 東方新報】「中国インターネット発展状況統計リポート」によると、2021年末時点で中国の60歳以上のインターネット利用者は1億1900万人に上り、普及率は43.2%に達している。情報社会から取り残される高齢者のデジタルデバイド(情報格差)が社会問題になっている中、ネットの普及率が上がることは好ましいが、一方で「ネット中毒」も問題となっている。中国メディアの調査によると、1日10時間以上ネットを見ている高齢者は10万人を超えるという。

 浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)郊外に住む70歳の女性、張(Zhang)さんも1日に10時間、スマートフォンやiPadを見ている日が珍しくない。海外でTikTokとして知られるショート動画投稿サイト「抖音(Douyin)」を見たり、マージャンゲームをしたり、ずっと画面を見つめている。張さんは夫に先立たれ、1人娘は結婚して杭州市中心部で生活しており、1人暮らしをしている。コロナ禍の影響で近所のお年寄りと公園でおしゃべりをする機会も減り、ネットに夢中に。外出をしなくなって体力が衰え、料理も洗濯もあまりしないようになった。

 デジタルネイティブ世代と違い、高齢者はインターネット上の情報をうのみにしやすい。張さんは「ラクダのミルクが健康にいい」という広告を見て大量購入してしまった。娘の楊さんはたまに実家に帰るたびに母親を注意するが、聞き入れられない。楊さんは「子どもならスマホを取り上げ、場合によっては親が契約を打ち切ることもできるが、大人にはそうはいかない」と嘆く。

 全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では、代表の1人、柯雲峰(Ke Yunfeng)氏が「高齢者がネットの沈迷(中毒)になることを防ぐ対策をすべきだ」と提案。「防沈迷」は中国のSNS「微博(ウェイボー、Weibo)」のホットワードに浮上した。心療内科医の陳邦定(Chen Bangding)氏は「高齢者が喜んで参加したい活動や居場所をつくる必要がある」と指摘する。

 母親のネット中毒に頭を悩ませた楊さんはその後、最新のスマート調理器をプレゼントした。そして楊さんの子どもを連れて週末に実家に訪れ、家族三代で一緒に料理をするようにした。楊さんが最新のスマート洗濯機もプレゼントすると、張さんは平日も再び料理や洗濯をするようになり、ネットを見る時間は大幅に減ったという。

 北京大学(Peking University)の精神衛生博士、王冰(Wang Bing)氏は「人間の平均寿命が長くなり、定年退職した高齢者は心身ともに健康なのに、社会に参加する機会が増えていない。人とつきあいたい、認められたい、必要とされたいニーズを満たすことが重要だ」と呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News