【11月22日 AFP】2019年の世界の全死亡者のうち、細菌感染症による死者が虚血性心疾患に次ぎ第2位となったとする論文が22日、英医学誌ランセット(Lancet)に掲載された。細菌感染症による死に関する国際的な集計は世界初としている。

 調査は、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)が資金援助している「世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)」の一環として行われた。204の国・地域で、33種類の一般的な細菌と、11種類の感染症による死亡例を調査した。

 その結果、2019年には、これらの病原体による感染症が全死亡者の13.6%に当たる770万人の死因だったことが分かった。死因としては、心臓発作など虚血性心疾患に次ぐ割合を占めた。同年には、新型コロナウイルスはまだ本格的に流行していなかった。

 死者の半数は、黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎球菌、肺炎桿(かん)菌、緑膿(りょくのう)菌の五つの細菌によるものだった。黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や鼻腔(びくう)に常在する菌で、さまざまな病気の原因となる。大腸菌は食中毒を引き起こす。

 報告書の共著者の一人、米保健指標評価研究所(Institute for Health Metrics and Evaluation)のクリストファー・マレー(Christopher Murray)所長は「今回の新たなデータにより、細菌感染が世界の公衆衛生に及ぼす全容が初めて明らかになった」と指摘した。

「何よりも重要なのは、今回の結果を世界の公衆衛生における取り組みに落とし込むことだ。そうすることで、こうした致死性の病原体に対する理解を深め、死者と感染者を減らすための適切な投資を呼び込める」

 地域別では、サハラ以南のアフリカにおける細菌感染症による死者は人口10万人当たり230人に上っている。一方、欧米やオーストラリア、ニュージーランドなどの高所得国では52人にとどまる。

 研究チームは、ワクチン開発などに向けた投資の拡大を呼び掛ける一方で、未承認の抗生物質の使用には警鐘を鳴らしている。手洗いも感染予防の一手段として推奨されている。(c)AFP