【11月22日 AFP】英国で、ロシアのウクライナ侵攻に伴う物価高騰や鳥インフルエンザの発生を受けて卵の流通量が不足している。伝統のイングリッシュ・ブレックファストはもちろん、日々の食卓にも欠かせない食材だけに、人々はひと味足りない食生活を余儀なくされている。

 卵不足を受け、格安スーパーマーケット大手のアスダ(Asda)とリドル(Lidl)は、購入個数の制限に踏み切った。

 一方、ロンドン中心部でフルイングリッシュ・ブレックファストを提供するカフェの経営者(51)は、卵の卸売価格はここ3か月間で360個当たり20ポンド(約3300円)から68ポンド(約1万1300円)に値上がりしたとAFPに語った。「光熱費から仕入れ値まで、何もかもが毎週上がっている」と嘆く。

「4~5か月は営業を続けられるが、その後は店を閉めるほかないかもしれない」と話し、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)も苦境の一因だと恨めしそうだった。

 大手パブチェーン「JDウェザースプーン(JD Wetherspoon)」では先週から、卵の代わりにハッシュドポテトを使ったフルブレックファストを提供し始めた。大衆紙デーリー・スター(Daily Star)には、「トリ(取り)返しのつかない恥さらし」と1面で書き立てられた。

 英国では今年、ベーコンやソーセージをはじめとする肉製品の価格が高騰し、より安価なたんぱく源として卵の需要が拡大していた。

 そこへ、鳥インフルエンザが発生。政府はそれを受け、今月7日以降、イングランド全域で家禽(かきん)や飼育する鳥類を屋外に出さないよう勧告。発生地域で大量の家禽が殺処分される中、卵の生産数は減少した。業界団体によれば、英国内の養鶏農家の3分の1が卵の生産を縮小している。

 鶏卵生産者団体は、生産コストの上昇にもかかわらず小売業者が仕入れ価格の引き上げを受け入れようとしないと非難。また、スーパー大手セインズベリー(Sainsbury's)がイタリアから卵を輸入しているとの報道に、抗議の声も上がっている。

 これに対し、テレーズ・コフィ(Therese Coffey)環境・食料・農村相は、「採卵用のニワトリはまだ1400万羽近くいる」と述べ、火消しに回っている。(c)AFP/Valentine GRAVELEAU