【11月21日 AFP】イラン西部の少数派クルド系住民が多く住む地域で、当局による大規模な弾圧が起きているもようだ。人権団体が20日、明らかにした。治安部隊が多数投入され、激しい銃撃音や悲鳴が聞こえる動画などが19日夜から20日にかけてインターネットに相次いで投稿されたという。

 イランでは、服装規定違反を理由に道徳警察に逮捕されたクルド系女性の死をめぐる抗議デモが2か月以上続いている。人権団体によると、これまでに全31州中25州で、取り締まりの過程で計378人が死亡、6人に死刑判決が下された。当局は著名人やスポーツ関係者、ジャーナリストらの一斉摘発も実施。国営イラン通信(IRNA)は20日、頭髪を覆うスカーフを公の場で外してデモへの連帯を示した有名女優2人が逮捕されたと報じた。

 全国に拡大したデモに最初に火が付いたのが、クルド系地域だ。西アゼルバイジャン(West Azerbaijan)州の都市マハバード(Mahabad)では、弾圧の犠牲者の葬儀後に人々が道路を封鎖して座り込みを行う映像や、治安部隊の暴力に抗議する労働者によるストライキの情報が伝えられていた。

 ノルウェーを拠点とする人権団体ヘンガウ(Hengaw)は、マハバードに「武装治安部隊」が派遣され、「住宅街で激しい銃撃が行われている」とツイッター(Twitter)で報告。精鋭部隊「革命防衛隊(IRGC)」の隊員を乗せてマハバード上空を飛ぶヘリコプターだとする映像を公開した。

 人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)は、19日夜から20日にかけて撮影された、銃声が響き渡る市内の様子とされる動画や、銃撃音とともに悲鳴が鮮明に記録されている音声ファイルを公開。「(当局によって)電力が遮断され、銃撃音が聞こえる。死傷者が出ているとの未確認情報もある」と報告した。

 イラン多数派のペルシャ系住民はイスラム教シーア派(Shiite)に属するが、クルド人はスンニ派(Sunni)。マハバードは、第2次世界大戦(World War II)直後の1946年にソビエト連邦の支援でクルド人が樹立した未承認独立国家「マハバード共和国(Republic of Mahabad)」の中心都市で、クルド系住民にとっては特に思い入れのある地だ。結局、この共和国は1年足らずでイラン当局に制圧された。

 人権団体ヘンガウは、西部クルディスタン(Kurdistan)州のディバンダーレ(Divandarreh)やサケズ(Saqez)、サナンダジ(Sanandaj)についても、当局が民間人に発砲するなど「危機的」な状況が伝えられているとしている。(c)AFP/Stuart Williams